占有とは?その意味について

今日のテーマは「占有」です。読み方は「せんゆう」

この用語は日常用語としても用いられますが、法律用語としても重要な意義を有しています。

以下、用語のイメージ把握のため、簡単に日常用語として意味を確認した上で、民法における意味や要件、態様や機能などについて見ていきます。

日常用語としての意味

占有は、日常用語としても用いられます。

たとえば、A社が、市場のシェアをほとんど占有している、というときは、A社がシェアをほぼ独占的、排他的に有していることを意味します。

また、ある建物の敷地占有率は50%だ、という場合、その建物の底地が敷地の50%の割合を占めている、という意味になります。

このような日常用語としての「占有」には、「他者が入り込めないような排他的な地位や物理的な状態を有している」といったニュアンスがあります。

民法における「占有」についても、同様のニュアンスで理解できます。以下、解説していきます。

占有とは

占有とは、物に対する事実的な支配状態を指します。

直接でも間接でもいいのですが、大ざっぱに言えば、ある物を事実上コントロールしうる状態にあることを指します。

ここでは「事実」としてその物がコントロール下にあるか否かが重要で、そのコントロールを法律上正当化する権限の有無は、占有の有無とは関係がありません。

このイメージをもう少しつかむために、動産及び不動産についての占有例を見てきましょう。

動産の例

まずは動産についての例です。

今、私の目の前にはパソコンがあります。これは私のコントロール下にあり、私は、このパソコンを使ったり、閉じたり、電源を抜いたり、はたまた捨てたり、といったことができます。つまり、このパソコンは、今、私が占有している状態です。

では、このパソコンが盗まれたらどうでしょうか。

このパソコンが盗まれて、誰がもっているか分からなくなった場合、私はこのパソコンの占有を失います。

他方で、パソコンを盗んだものは、そのパソコンを自分のコントロール下において使ったり、捨てたりできますね。

この場合、その盗んだ者にパソコンの占有があることになります。パソコンの所有権が誰にあるかは、占有の判断に際しては無関係です。

では、パソコンが盗まれたのではなく、私が友人に貸したという場合はどうでしょうか。

この場合、友人はパソコンを使ったり、閉じたり、はたまた捨てたり、ということが事実としてはできますね。

借りたパソコンを捨てるなんてとんでもない、と思われるかもしれませんが、ここでは事実としてそれができるか否かがポイント。やはり所有権の有無などは関係ない。

では、貸した私の占有はどうなるでしょうか。

ここがちょっと複雑なのですが、実は、私はまだパソコンを占有しています。友人を通じてパソコンをコントロールできますので、私もパソコンを占有していると評価されます。

後述しますが、このような他人を通じた占有のことを、「代理占有」といいます。

不動産の例

占有の対象は動産だけではありません。不動産もその対象です。

たとえば、あるアパートの一室を借りているという場合、借主は、その室内をコントロールしうる立場にありますので、これを占有しているといえます。

また、貸主も、借主を通じて当該部屋をコントロールする地位に立つため、その部屋を代理占有している、という立場に立ちます。

また、土地もその対象です。ある土地に建物を建てたという場合、その建物の所有者は、建築物の保有という態様で、少なくとも当該建物が存する直接の敷地を占有していると評価されます。

建築物を建てることで、その土地の使い方をコントロールしているわけです。

ただ、土地については、実はかなり難しい問題があります。この点については後述します。

専有との違い

不動産の占有について述べたので、ここで、これに関連する類似用語「専有」について、簡単に解説しておきます(ご関心のない方は読み飛ばされてください。)

専有というのは、マンションの区分所有者に関する権利義務関係などを定めた区分所有法に出てくる概念です。

マンションにおいては、各部屋が区分されて所有権の対象になります。たとえば201号室、202号室など、それぞれ別個に所有権の対象となります。

このような区分所有の対象となる各戸部分を、区分所有法では専有部分といい、また専有部分を所有していることを「専有」と表現します。

たとえば201号室の所有者がAさんである場合、Aさんが201号室を専有している、などというわけです。

占有と専有、言葉が似ており紛らわしいですが、法的な意味付けは大きく異なりますのでご注意ください。

成立要件

さて、話を「占有」に戻します。以下では、もう少し厳密に占有の成立要件について見ていきましょう。

民法180条によれば、ある人がある物を(直接)占有しているといえるための要件は、①自己のためにする意思をもって、②物を所持することです。

以下、それぞれ見てきます。

①「自己のためにする意思をもって」

「自己のためにする意思をもって」というのは、意識するかしないかを問わず、また、直接であるか間接であるかを問わず、その物の所持することによる利益・影響を享受する立場にあることを言います。

難しい言い方をしましたが、「自己のためにする意思がある」とされる場面は非常に広く、要は、その物の所持することにつき、何らかの利害があれば、おおよそこの要件は満たされるものと理解されます。

たとえば、郵便ポストに入っている郵便物につき、それを認識していなくても、「自己のためにする意思」はあるとされます(その物の存在を意識しているか否かを問わない)。

また、他人のために物を預かっているという場合でも、その所持を失うとまずい(間接的であれ、所持することにつき利益・影響を享受している)ですから、この要件は満たされます。

上記の通り、「自己のためにする意思をもって」の要件は、非常に広く解されます。

条文上存在するので、一応要件として整理しますが、学説においては、この要件はもはや不要である(意味がない⇒所持要件に含めて考えれば足りる)、と解する見解もあるほどです。

実生活において、次に述べる「所持」の要件が認められながら、「自己のためにする意思」を欠くという場合は、あまり想定できないかもしれません。

②「物を所持する」

「物を所持する」、というのは、目的物を排他的に支配することをいいます。

ただ、排他的支配が必要と言っても、占有と言えるために、必ずしも、手で握持する、カバンに入れておく、といったことは、必要ありません。

たとえば、家の中に置いている家財などの占有は、外出中でもその家主にあると考えられます。別荘に置いておいた家財などについても同様です。

さらには、月極駐車場においた自分の自動車についても、持ち主の管理下にある以上、占有が認められます。

大ざっぱですが、「その物は、普通に考えれば、そいつの管理下の物でしょ」といえる程度に達している場合には、排他的支配があるといえます。

なお、上記例からもお分かりかもしれませんが、所持の概念は、相当程度、観念的に把握されます。

目的物を排他的支配していると言えるかは、結局、目的物の性質・形状、目的物の管理の態様などを基礎として、社会通念に照らし、個別的に判断していくことになるわけです。

補足 刑法上の占有について
なお、占有概念は、刑法においても登場します。代表的なものとしては占有離脱物横領罪が挙げられますが、その他に、窃盗や詐欺罪なども占有の移転が犯罪成立要件とされています。

民法・刑法上の占有の概念は、必ずしも一致するものではありません。たとえば後述するような善意占有や代理占有といった考え方は刑法では観念されませんし、成立範囲も異なるものと解されています。

土地の占有の認定の難しさ

ここで、要件論に関連して、特に問題になりがちな土地の占有について、触れておきます。

土地は、動産類や建物と違い、①どういった状況であれば、あるいは、②どのよう範囲で目的物を占有しているといえるのか、といった点で難しい評価の問題を含有しています。

特に、原野や山林などにおいては、周囲との事実上の境界がはっきりしないことも多く、また、常日頃から占有者が常駐しているというわけでもありません。

そのため、往々にして占有の要件を満たすか、その範囲はどの程度かといった点につき難しい判断を迫られます。

昭和46年3月30日最高裁判例は、メルクマールとして次のように述べますが、実際の認定はかなり難しいです。

昭和46年3月30日最高裁判例
一定範囲の土地の占有を継続したというためには、その部分につき、客観的に明確な程度に排他的な支配状態を続けなければならない。

事例検討

占有の認定の難しさを知るには、事例検討をしてみるのが一番です。上記のような最高裁の判断基準に照らして、次の事例で、Yに平成11年~令和元年までの「A土地(本件土地)」の占有が認められるか、ぜひ一度考えてみてください。

<検討事例>
Yは平成11年に、現地を確認した上で、A土地(以下本件土地という)付近を第三者たるX株式会社から買受けた。

また、Yは、昭和平成11年4月ないし5月頃、現地を案内してもらい、木々が繁茂していた本件土地部分については伐採をして境界の杭を確認し、立札を立てた。なお、その当時、道路と本件土地との境界にはブロックが設置されていた。

さらにYは、同年8月にも現地に出かけ、現地の近くにあつた古いバスを買受け、これを本件土地に移し、バスの横の部分にYの住所、氏名及び電話番号を記載した。また、境界線の一部に杭を打ち、鉄条網を張った。

Yは、その数年後、本件土地上のバス及び鉄条網等がすべて撤去されていることを発見し、撤去工事をした業者に事情を聞くなどの調査をしたがはつきりしたことは分からず、そのままになつた。

その後、Yは境界石をその後二回位埋設したが、いずれも無くなってしまった。

Yは、平成15年2月に結婚した妻の実家が現地近くにあるので、その後は、毎年1、2回は現地に出かけて本件土地部分を確認、見分し、あるいは妻の実家から何か変わつたことがあれば連絡してもらうことにしていた。但し、Yは平成23年以降は現地に行つていない。

平成23年8月、Yは、現地の役場から地籍調査のための境界線の伐採及び標示杭の設置をするようにとの連絡を受けたので、Yは、平成24年3、4月頃現地へ出向き、本件土地の周囲に杭を打込んだ。

令和1年時点においては、本件土地の付近には白色、黄色あるいは赤色のプラスチック杭が多数埋設されており、「Y」と表示されたプラスチック杭も存在するが、本件土地には篠が密生しており、容易に立入りができないような状態になつている。

一応の回答

上記事例をみてどうでしょう?

Yは本当に本件土地を占有をしているといえるのか、仮に占有をしているといえても、それは最後まで継続しているといえるのか、悩みませんでしたか?

この事例は、東京地判昭和62年1月27日判決の事案を元に、管理人がデフォルメしたものです。

同判決においては、当初の一時期(上記検討例に当てはめれば平成11年8月頃を指すものと思われる)が、その後は排他的・独占的な支配管理があったとは言い難いとされており、占有の継続は否定されています。

補足:占有の消滅
上記事例にも表れたとおり、占有は、一度開始されても事後的に消滅しえます。

この点について規定しているのが民法203条です。同条は、自己のために所有する意思を放棄するか、所持を失うことによって、原則として占有が消滅する旨規定しています。

占有の態様

次に、占有の態様について説明します。占有は、いくつかの観点から分類されます。

<分類方法>
・所有の意思があるか否か
・自分で直接所持・支配するか、他人を通じて所持・支配するか
・分に本権(占有権限)があると信じているか否か
・占有者が、一人が複数か

以下、上記観点からそれぞれ分類していきます。

所有の意思があるか否か

まずは、所有の意思があるか否かという観点からの分類です。

自主占有とは

自主占有とは、所有の意思を持って、対象物を自己のために所持する場合を指します。

自分が、主(ぬし)だ、という意味での占有です。

自主占有か否かは、主として時効取得の成否をめぐって問題となります。所有権の時効取得は、自主占有の場合にしか認められないからです。

関連記事:時効取得とは
取得時効の要件等についてはこちらの記事で解説しています。占有をめぐる争いは、多くの場合、取得取得に絡んで発生しますので、取得取得に対する理解が深まれば、相乗的に占有の理解も深まるはずです。
関連記事:占有の承継について:相続のケースを中心に
時効取得と相続に絡んで占有の承継が問題になる場合を解説した記事です。

他主占有とは

他方で、他主占有とは、物を自己のために所持するものの、所有の意思がない場合を指します。

他人の物を預かったり、借りたりしている、というのが典型例です。

ちなみに、占有の開始時点において、他主占有だったとしても、事後的に、自主占有に代わることがあります。

たとえば、借りていたものを、お金を支払って買い受けた、というような場合です。リース物件につき、リース期間終了後に買い受ける、もらい受けたりするケースもその一つといえそうです。

この点については、民法185条に規定があります。別途改めて解説します。

自分で直接所持・支配するか、他人を通じて所持・支配するものか

また、占有には、第三者を通じた所持か否か、という観点からの分類もあります。

自己占有(直接占有)

まず、目的物を自ら直接所持・支配する場合を自己占有(または直接占有)と言います。

私は現在、パソコンを所持して、これを使用していますが、これもその一つです。

教科書などでAが目的物を占有しているというような表記があるときは、特段の断りがない限り、この自己占有を指すことが多いです。

代理占有(間接占有)

他方で、占有というのは第三者たる占有代理人を通じても行うことができます。

民法181条  占有権は、代理人によって取得することができる。

この第三者たる他人を通じて、目的物を所持することを代理占有(または間接占有)といいます。本人以外のものが本人のためにする意思を持って、目的物を所持することによって生じます。

たとえばAさんがBさんに手紙を預けたような場合、Bさんは、Aさんのために手紙を代理占有している、ということになります。

なお、代理占有の消滅事由については、民法204条が規定しています。参考までに挙げておきます。

民法204条第1項
代理人によって占有をする場合には、占有権は、次に掲げる事由によって消滅する。
①  本人が代理人に占有をさせる意思を放棄したこと。
②  代理人が本人に対して以後自己又は第三者のために占有物を所持する意思を表示したこと。
③  代理人が占有物の所持を失ったこと。
第2項  占有権は、代理権の消滅のみによっては、消滅しない。

自分に本権(占有権限)があると信じているか否か 

さらに、占有は、占有を正当化する権限(以下、本権といいます。)があると信じているか否かという観点から分類することが可能です。

善意占有

まず、善意占有についてです。

善意占有とは、本権に基づかない占有のうち、占有者が自分に本権があると誤信している場合を指します。

善意占有はさらに、本権が自分にあると信じたことにつき過失がある場合と過失がない場合とに区別できます。

悪意占有

他方で、悪意占有というのは、自分に本権がないと知りながら、または本権の存在につき疑いを持ちながら目的物を占有している場合を指します。

善意占有か悪意占有かは、取得時効が短期で成立するか、長期での成立となるか(民法162条)、占有期間中の果実の収取権があるか(民法189条)といった点で差異を有します。

参照:民法162条(所有権の取得時効)
① 20年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
② 10年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。
補足
この占有に関し善意・悪意という場合、いずれにしても本権がないことを前提にします。

本権がないのにあると信じている場合を善意、そうでない場合を悪意と言っているのであって、いずれにせよ本権が不存在の場合を想定している概念です。

占有者が、一人が複数か

占有者が一人か複数か、という分類法もあります。

共有者などが、目的物を複数で占有する場合を共同占有と言い、目的物を単独で所持する場合を単独占有といいます。

占有による推定

以上、概念や分類について見てきましたが、ここで、推定効について簡単に説明します。

占有は、時効取得や即時取得における一定の要件を推定する効力を有します。その根拠となるのは民法186条と民法188条で、時効取得・即時取得という本権取得の場面で重要な役割を果たします。

結論を述べれば、占有によって、即時取得においては「平穏・公然・善意」の要件がに加え、「無過失」が推定されます。

また、時効取得についても、「平穏・公然・善意」が推定されます。

これは民法の占有が有する極めて重要な法的効果です(詳細については次の関連記事をご参照ください。)

関連記事:民法186条と188条~占有による平穏・公然と善意及び無過失の推定~
推定効について、条文を整理した記事です。即時取得について無過失が推定され、時効取得について無過失が推定されない根拠などについても触れています。

準占有

最後に準占有について簡単に解説します。

準占有とは、自己のためにする意思をもって財産権の行使をすること指します。民法が規定する占有権(180条以下)の規定が準用されます(ただし即時取得(民法192条)については準用されないと解されています。)。

たとえば、著作権について見ると、著作権者としてふるまい、その著作権を排他的に支配していると評価しうる客観的な状態にあれば、「著作権を行使」しているといえ、準占有が成立します。

また、準占有は、物の直接的な使用・収益を内容としない財産権にも成立しえます。

通説に従えば、たとえば、地役権や先取特権、抵当権、著作権などについても、その権利を排他的に支配していると評価できる外部的な事情が存在すれば、準占有が成立しえます。