所有権とは~民法206条~

今回のテーマは所有権です。

この用語は日常用語としても、しばしば登場するので、比較的なじみやすい概念ではあります。

以下、所有権の権利の内容や制限について見ていきます。

所有権とは

所有権とは、物権の一つであり、物に対する全面的な支配権を指します。

ここで、物の支配権というのは、物を自由に使用・収益・処分できる権利を指します。

ある物に対して所有権があるという場合、その所有者に当該物に対する使用・収益・処分の権利が一体となって(渾一となって)帰属することになります。

<民法第206条>
所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。
関連記事:物権とは?債権との違いやその種類について
所有権の内容を理解するには、他の物権と対比するのが有益です。所有権以外の物権についてはこちらの記事で解説していますので、ぜひ一度ご参照ください。

物の使用・収益・処分について

以下、所有権の内容となる使用・収益・処分の例を簡単に見てみましょう。

物の使用~使用権~

所有権に含まれる権利の一つに物の使用権があります。これは、文字通り、物を使うことができる、という権利です。

今、私の目の前に私所有のパソコンがあり、私はこれを使用しています。

私がこのパソコンを使用することにつき、私はだれからも文句を言われる筋合いはありません。私にパソコンの所有権が帰属し、その所有権に基づいて、パソコンを利用しているからです。

このように、所有権には、所有者が対象物を使うことができる、という使用権が含まれます。

物の収益~収益権~

物の収益権というのは、物から生じる果実や利益を取得できるという権利を指します。

たとえば、ある土地上にミカンの木があるとしましょう。そのミカンの木の所有者は、その木から生じるミカンを収受できます。所有者としてミカンの木から生じる果実を取得できるわけです。

また、ある車を所有する者は、その車を人にレンタルして利益をあげることができます。この利益が車所有者に帰属するのも、収益権が行使される一場面と評価できます。

このように、物から生じる果実や利益を所有者が収受できる権利を収益権といいます。

物の処分~処分権~

ある物の所有者は、物を処分する権利を有します。

ここで、処分というのは、大ざっぱに言えば、物に対して重要な影響を与える行為を指します。

これには、物を壊す・捨てる、改造するといった事実行為の他、物を売却したり、物に対して地上権や抵当権などの権利を設定したりする法律行為を含みます。

所有権の客体~不動産と動産~

所有権の対象は動産及び不動産です。

不動産というのは、土地及び土地に定着する物(定着物)をいいます。土地の定着物としては、建物が典型例です。土地の所有権は、その上下に及びます(民法207条参照 ただし法令上、一定の制限を受けます)

動産というのは、不動産以外の「物」をいいます。

なお、著作権や特許権も、知的財産に対する支配権と一途けられますが、「物」に対する支配権としての所有権とは区別されます。

参照 民法207条
土地の所有権は、法令の制限内において、その土地の上下に及ぶ。

所有権の性質

所有権の理解を深めるために、次に所有権の性質を見ていきましょう。

観念性

上記の通り、所有権は物に対する支配権(使用・収益・処分)を指しますが、この支配権は観念的に把握できます。

所有者は、現実に目的物を所持していなくても、物の所有権が帰属するのです。

たとえば、私は、私の実家においてある私物を現に所持しているわけではありませんが、それでも、この私物の所有権は私に帰属します。

また、私が人に貸している本なども同様です。現実の所持とは無関係に私に所有権が帰属します。

このように、現実的に物を所持(占有)していなくても、その権利が肯定されることを所有権の観念性といいます。

絶対性

また、所有権には、絶対性があります。

ここでいう絶対性には、二つの意味合いがあります。

一つは、所有者が、誰に対しても、その権利を主張できる、という意味合いです。

もう一つは、所有権が国家を含めて誰からも侵害されない、という意味合いです。

ただし、所有権も公共の福祉による観点からの制約は受けます。この点については後述します。

恒久性~時効との関係~

さらに、所有権には、恒久性という性質があります。

これは、目的物が存在する限り、永久に存続する、という性質です。

権利が一定の期間に限って存続する、というものではなく、目的物が存在する限り、存在し続けるという性質です。

また、その恒久性から、所有権は消滅時効にかかることもありません。

<補足>
上記の通り、所有権は消滅時効の対象とはなりません。その行使の有無を問わず、消滅することはないのです。

ただ、時効取得の関係では注意が必要です。

第三者が所有の意思を持って、長期にわたり、ある物を占有しているという場合、当該第三がその物を時効取得しえます。

もともとAさんの所有物だったのが、時効取得によりBさんの所有物になる、ということはありえるのです。

この場合、元々の所有者(時効取得された側(A))の所有権は、反射的に消滅します。

少し混乱するかもしれませんが、所有権が消滅時効により消滅することは無いが(所有権の恒久性)、第三者が時効取得する場合には、もともとの所有者の所有権は消滅する、と整理することになります。

渾一性

所有権は、物に対するあらゆる権利の源泉たる権利としての性質を有します。

これはなかなか説明が難しいのですが、イメージとして言えば、所有権という権利の器の中で、各種の権利(使用権・収益権・処分権)が溶け合って融合している、というようなイメージです。

これを所有権の渾一性といいます。所有権者がその権利を行使する場合には、所有権に含まれる権利の一部を取り出して使う、ということになります。

たとえば、所有権者が第三者に対して地上権を設定する場合には、所有権に含まれる権限の一部(土地に建物等を構築するための権限)を取り出して、第三者の与えている、ということになります。

弾力性

土地の所有権者が、ある物に地上権などの用益物権や抵当権などの担保物件を設定した場合、所有権者のその土地に対する支配権はその範囲でいったん縮減(制限)されます。

第三者に権利を設定した分、所有権者の支配権は小さくなるのです。

しかし、所有者がいったん用益物権や担保物件を設定した場合であっても、その権利が消滅すると、その分、所有権者の権限は回復します。

所有者が設定した用益物権や担保物件がすべて消滅した場合、所有者は再び物に対する全面的な支配権を有することになるのです。

これを所有権の弾力性と呼びます。

関連記事:用益物権とは~制限物権との違いやその種類等について~
用益物権や制限物権ってなんだ?という方はこちらの記事をご参照ください。所有権を制限する物権を総じて制限物権というのでしたね。

所有権に対する制限

上記の通り、所有権は、物に対する支配権を意味します。

しかし、その所有権の行使は、必ずしも無制限ではなく、公共の福祉による制約を受けます。

たとえば、閑静な低層住宅地街のど真ん中の土地を有する土地所有者が、土地所有者だからと言って、大規模ごみ焼却所をつくったり、超高層マンションを建てたりすることは許されるでしょうか。

これが許されてしまえば、その周囲に住む多数の住民の利益が害されますから、とても容認できません。

所有権の行使も、無制限ではなく、公共の福祉に適合することが求められるわけです。

民法206条が、所有者は、「法令の制限内において」、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する、と定めていることもその表れといえます。

所有権の行使を制限する法令としては、民法の相隣関係の規制の他、都市計画法建築基準法、大気汚染防止法、自然環境保全法などがあります。

また、直接的な法規制がない場合でも、公共の福祉を著しく害するような所有権の行使が、権利濫用として制限されることもあります。

所有権の侵害に対して

上記の通り、所有権は物に対する排他的な支配権を意味します。この所有権の侵害に対しては、民事上一定の救済が与えられます。典型例が物権的請求権と損害賠償請求権の行使による救済です。

物権的請求権

たとえば物を取られてしまった、物の使用が妨げられてしまったという場合には、所有者は、民事上、侵害者に対して所有権を返せ、所有権の妨害を排除しろ、などと主張することができます。

これを物権的請求権といいます。

関連記事:物権的請求権とは?その種類や性質、相手方に関する判例など
所有権を含む物権に基づく物権的請求権について説明した記事です。ぜひ一度ご参照ください。

損害賠償請求権

また、第三者が、物を壊してしまった、という場合、当該第三者に故意または過失があれば、所有者は、侵害者に対して、不法行為に基づく損害賠償請求権を行使することが可能です。

たとえば、交通事故によって車を棄損してしまった、といった場合に、この不法行為に基づく損害賠償請求権の行使により、被害者はその救済を得る、ということになります。