今回のテーマは、不動産の共有持分についてです。
不動産の共有というのは、ある土地や建物などを複数の人間ないし法人が共同で所有する形態を言います。
そして、持分というのは、この共有において、各共有者それぞれが有する所有権の割合のことです。
たとえば、夫婦がある土地につき、それぞれの所有割合を半分ずつとして所有する場合、互いの持分は双方2分の1ずつ、ということになります。
以下、この共有持分の定め方や確認方法、処分の方法について、民法上のルールを見ていきます。
土地や建物の持分の決め方~合意で自由に決められる~
たとえば、夫婦が共同で不動産を購入する場合を見てみましょう。
この場合において、その持分を2分の1ずつとするのか、どちらか一方の持分が多い形をとるのかは、夫婦で自由に決められます。
夫の持分を多くするか、妻の持分を多くするか、相等しくするかは夫婦で決めることになります。
なお、実際上、夫婦で購入して不動産を共有とする場合には、①互いに2分の1ずつとするか、②互いに出捐した金銭の割合によって、持分を定めることが多いようです。
②の方法は、たとえば1000万円の不動産につき、夫が600万円・妻が400万円を出捐したという場合、夫の持分を5分の3、妻の持分を5分の2とするという方法です。
ある不動産につき、Aさんが対価を全額出すのに、その持分をAさんとBさんの50%ずつなどと定めると、不動産の価値半分に相当する利益をAさんがBさんに贈与した形となります。
このような場合、贈与税が発生しかねませんので、ご注意ください。
なお、当サイトは、法律に関するサイトであるところ、税金については、門外漢です。
贈与税などの問題は、税理士や不動産業者等にご確認ください。
共有建物をリフォームした場合の持分
まず、共有不動産につきリフォームがされた場合において、当然には持分は変更されません。
もっとも、共有者の一方のみがリフォームに費用を支出した場合、費用償還請求などが可能です。
また、相手方が当該費用を償還しない場合、費用を支出した側は、相当の償金を支払って相手方の持分を取得しえます
当然には変更されない
上記の通り、持分は当事者間の合意によって定める事項です。
リフォームが行われたからと言って、当然には、持分割合に変動は生じません。
夫婦の一方だけが出捐して(コストを負担して)リフォームをした場合も同様です。
費用負担請求について
もっとも、共有者の一人の出捐によって不動産の価値が増えている(その結果、持分を有する他の共有者の利益にもなっている)のに、何らの手当てもないとすると、公平性を欠くきらいがあります。
この点に関し、適用しうるのが民法253条です。
1 各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う。
2 共有者が一年以内に前項の義務を履行しないときは、他の共有者は、相当の償金を支払ってその者の持分を取得することができる。
民法253条の第1項は、共有者は、その持分割合に応じて共有物の「管理の費用」を負担すべき旨定めた規定です。
条文上は「管理の費用」と定められていますが、ここには、「管理」だけでなく、共有物の「変更」(民法251条)・「保存」(民法252条但書)に要する費用も含まれると理解されています。
そうすると、建物のリフォームも、その程度に応じて、共有物の「保存」・「管理」・「変更」に該当すると解されるため、その費用は、同第1項の費用に該当する、といえそうです。
そうだとすれば、リフォームにつき出捐した共有者の一人は、持分割合に応じて、他の共有者にそのリフォーム費用の負担を請求しえます。
出捐者による持分の取得
そして、他方共有者が1年以上、費用負担をしない場合、リフォーム費用の出捐者は、相当の償金を支出して他方共有者の持分を取得しえます。
もう一度民法253条を見てください。同2項が、費用負担がなされない場合について定めています。
この規定によれば、他の共有者が費用負担義務を1年以内に行わない場合、リフォーム費用を出捐した共有者の一人は、相当の償金を支払うことで、他方当事者の持分を取得できます。
土地・建物の持分割合の確認方法
・登記がなされている場合⇒登記事項証明書をチェックします
・未登記の場合⇒事実関係の調査が必要です。
持分が登記されている場合
不動産持分は、通常、登記でチェックすることが可能です。
日本の不動産については、登記が整備されています。
不動産業者などを介して、不動産を購入した場合、共有持分を定めていれば、その旨登記するのが一般的です。この持分は、法務局にて不動産登記事項証明書を取得することで確認できます。
外部リンク:法務局 各種証明書申請手続
なお、ここで、法務局の各種証明書申請手続のページにリンクを張っていますが、ご自身の持分を調べたいという場合、最寄りの法務局にて問い合わせをするほうが、簡便かもしれません。
登記が怠られている場合(未登記の場合)
共有関係が生じるのは、不動産の購入などの場面だけではありません。
たとえば、相続や贈与などによっても、共有関係は生じ得ます。
そして、このような理由により共有関係に変動が生じた場合、本来行われなければならない登記手続が怠られることが実は少なくありません。
登記には費用と手間がかかるためです。
そのため、持分が未登記であることはざらにあります。
事実関係の調査が必要
持分が登記されていない場合、持分を確認するには、事実関係の調査が必要になります。
当然のことですが、登記をみても現在の持分は分かりません。
たとえば、相続の場合、未登記の持分割合を把握するには、戸籍などを取得して法定相続人・相続割合を算定し、それによって持分を算出する方法によることになります(ただし遺産分割協議がなされた場合にはそれによる)
また、その他の原因によって共有関係が登記されていない場合、たとえば契約書などの資料の調査を行い、持分割合を判断していくことになります。
それでも持分がわからない場合
いろいろ調査したが、結局ある土地ないし不動産につき、共有者間の持分割合が分からない場合、持分割合はどうなるのでしょうか。
この場合については民法に規定があります。第250条です。
この規定の下では、持分割合が不明な場合、持分はそれぞれ等しいものとして推定されます。
各共有者の持分は、相等しいものと推定する。
持分の処分の方法
- 持分の譲渡や贈与・売買
- 共有物の分割
- 持分の放棄
持分の譲渡や贈与・売買
持分を処分する方法の一つは、持分を贈与・売却などして、処分する方法です。
共有持分権者は、ほかの共有者に自分の持分譲渡したり・売却したりすることができます。
また、共有者以外の第三者にこれを処分することも可能です。
ただ、第三者へ持分だけ処分しようと思っても、実際上、その引き取り手を見つけるのに難儀することは多々あります。
共有物の分割
持分処分の方法の二つ目は共有物を分割してしまうことです。
分割がうまくいけば、分割された土地に関し、それぞれ単独所有が成立し得ます。
また、建物についても、全面価格賠償などの方法により、共有者の一方が建物を単独所有し、他方がその対価を受け取る、といった形での清算が行われ得ます。
各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる
持分の放棄
持分処分の方法の3つめは、持分を放棄する方法です(民法255条)。
民法は共有権者の一人が持分を放棄すると、その持分が他の共有権者に帰属すると定めています(第255条)。
この民法の規定を利用して、共有権者は、持分を処分することが可能です。
たとえば、Aさん、Bさんが互いに土地の持分を2分の1ずつ有しているという場合に、Aさんが持分を放棄すると、Bさんが当該土地の単独所有者となります。
共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。
持分の売却等については専門業者に相談をするのもあり
具体的な持分処分に際しては専門業者に相談されるのをお勧めします。
たとえば、共有者の一人に持分を譲渡する方法と、持分の放棄によって共有者に持分を集中させる方法は、共有者の一人に単独所有させるという結果招来を招き得る点で同一です。
しかし、税金の面では違いが生じ得ます。
また、持分を第三者に譲渡・売却するに際しては、その相手を見つけるのに難儀することが多々あります。持分の処分は意外と簡単ではありません。
持分の処分にお悩みの場合には、不動産仲介業者など、専門の業者に相談された方がよいかもしれません。
ここで関連記事を紹介!
次の記事は、民法における「共有」に関し逐条的に条文の解説・説明を行っている記事です。
共有に関する知識が深まると思いますので、ぜひご一読ください。