今回のテーマは権利能力なき社団についてです。
民法総則の序盤においては、比較的重要度の高いテーマです。
本記事では、まず、権利能力なき社団の定義や成立要件を確認します。
また、派生論点についても随時リンクを張っています。
権利能力なき社団とは
権利能力なき社団とは、社団としての実体を備えているものの、法人格を有ないために、法形式上、権利義務の帰属主体となることができない団体をいいます。
法人格はないものの、実社会の多くの場面で、法人と同一の取り扱いを受けます。
社団とは
社団というのは、人の集合体たる団体であって、独立かつ単一に存在・活動するものです。
身近な例としては、マンションの管理組合や自治会等があげられます。
権利能力なき社団は、こうした社団であるも、所定の要件を満たさないため、法人格を有さない団体と定義されます。
大ざっぱに言えば、組織として法人レベルのまとまりを有するが、法人格を取得していない団体です。
上記の様な法人と同レベルのまとまりを有する一定の団体については、実社会生活において、可能な限り法人と同一に扱うのが便宜です。
実際、一定のまとまりをもった多人数を取引相手とする場合、個人ではなくその団体を取引主体とするケースが少なくありません。
そこで、判例上、権利能力なき社団という概念が認められており、同社団は、現在では、取引の主体たる実質的な地位が広く認められています。
権利能力なき社団は、契約はもちろん、訴訟においても当事者たる地位をも有します。
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権利能力なき社団は法人格なき社団と言われたりもします。
なぜこのように言い換えができるのでしょう?法人格の定義があいまいだと答えられないかもしれません。
法人格の定義、本当にしっかり言えますか?次の記事では、法人格の定義や法人格取得のメリット等について解説しています
具体例
ここで、権利能力なき社団の具体例を見ておきます。
以下、具体例として、該当例・非該当例の説明として挙げられることが多いものを見ていきます。
該当例として挙げられやすいのは、自治会、町内会、マンション管理組合です。
非該当例として挙げられやすいのは、部活、サークル、同窓会です。
ある団体が権利能力なき社団に該当するか否かは、最高裁が示した成立要件によって判断されます(後述)。
したがって、ある団体が、権利能力なき社団か否かは、その名称や目的、性質によって一概に決まるものではありません。
ただ、一般論として権利能力なき社団に該当していることが多い団体、そうでない団体を示すことは可能です。
<該当・非該当の典型例>

該当しやすい:自治会、町内会、マンション管理組合
自治会、町内会、マンション管理組合⇒権能なき社団に該当することが多いです。
総会で代表者を選んだり、規約に基づいて財産管理を行ったり、などなど、団体としての組織が整っていることが多いためです。
ただ、これらの団体であるからといって、直ちに権利能力なき社団に該当するというわけではありません。
あくまで重要なのは、後述の最高裁提示の4要件を満たすか否かです。
ここで関連記事を紹介
権利能力なき社団に該当する場合の実務の取り扱いについては次の記事をご参考ください。イメージがしやすくなると思います。
該当しにくい:部活、サークル、同窓会 ~任意団体~
他方で、部活やサークル、同窓会はこれらの団体は、多くの場合、単なる任意団体である、ということが少なくありません。
サークルで総会を開いたり、代表者の選任なんかを厳格に多数決で行ってたり、といったことはあまりないですよね?
ただ、たとえば、サークルであっても、規約によって団体としての主要な点が定まっている等、上記4要件を満たせば権利能力なき社団に該当し得ます。
繰り返しになりますが、団体の名前や性質、目的で権利能力なき社団か否かが定まるのではなく、上記判例の求める要件を満たしているか否かによって判断されることになります。
最高裁が示す成立要件
どんな団体であれば利能力なき社団といえるのか、との点につき、最高裁は次の4つ(①~④)の要件を示しています。
①団体としての組織を備えていること
②多数決の原則が行われていること
③構成員の変更にも関わらず団体そのものが存続すること
④代表の方法、総会の運営、財産の管理その他団体としての主要な点が確定していること
権利能力なき社団といいうるためには「①団体としての組織をそなえ、②そこには多数決の原則が行なわれ、③構成員の変更にもかかわらず団体そのものが存続し、④しかしてその組織によって代表の方法、総会の運営、財産の管理その他団体としての主要な点が確定している」ことが必要である
<4つの成立要件(イメージ図)>
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以下4つの要件をそれぞれ見ていきます。適宜、上記図をご参照いただけると幸いです。
① 団体としての組織を備えていること
権利能力なき社団と言えるためには、まず団体としての組織を備えている(組織化されている)ことが必要です。
団体としての組織を備えているとは、複数の人間が独立かつ単一のまとまりとして存在していることを意味します。
併せて、個人と峻別された団体といえるためには、財産的独立性が保たれていることも、要素となります。
② 多数決の原則が行われていること
また、会社における株主総会などと同様、多数決で意思決定がなされていることが必要です。
判例が言う「多数決の原則が行われていること」というのは、複数の人間の集合体(組織)の意思決定が、多数決で行われていることが原則として必要であるということを意味します。
日常業務についてまで多数決で行うことは要しませんが、団体としての重要な意思決定は、多数決によることが要求されます。
なお、権利能力なき社団の多数決の方法は、基本的には普通決議ですが、重要事項については、規約などにより、議決権を有する構成員の過半数以上の議決を要する特別決議を要するとされている場合もあります。
③ 構成員の変更にも関わらず団体そのものが存続すること
権利能力なき社団と言えるためには、さらに、メンバーの入れ替わりがあっても団体として存続できることが必要です。
構成員の入れ替わりによって団体が存続しないようでは、それは構成員の個性が色濃く残る個人の集合体にすぎません。団体としての独立性を欠くことになります。
そのため、構成員の入脱退があったとしても、団体として独立に存続・継続しうる組織であることが求められます。
④ 代表の方法、総会の運営、財産の管理その他団体としての主要な点が確定していること
その他、団体として大事なことが決まっていることが必要です。
団体には通常、代表者がいます。ルールもあります。また、財産も有ります。
代表者をどのように決するか、または総会をどのように運営するか、団体の財産をどのように管理するかは、社団が単一の団体として動くために最低限決めておかなければならない事項です。
最高裁は、権利能力なき社団といいうるためには、このような団体としての主要な点が確定しなければならないことを要求しています。
なお、最高裁が示した上記4つの点については、これは4つの「要件」を示したものではなく4つの「要素」を示したものにすぎない、という見解もあります。これは、上記4つの要件が必ずしもそろっていることは要さず、4つの要素を総合的に考慮して、団体としての実体があれば、権利能力なき社団と認める、との見解です(判例に反する見解ではなく、判例をそのように解釈するという見解に位置付けられます。)。ただ、以下では、議論の錯そうを避けるため、「成立要件」として説明を続けます。
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権利能力なき社団の性質、組織・目的
権利能力なき社団は総会や理事会などの機関を備えています。その目的に制限はなく、非営利の団体もあれば営利目的団体も観念できます。
また、会社と同様、権利能力なき社団の財産は、社団解散時に、清算の対象にもなりえます。
組織について
権利能力なき社団は、上記4要件を満たす団体です。総会や執行機関などを有します。
このように述べてもわかりにくいかもしれませんので、比較として株式会社を考えてみましょう。
株式会社の組織
よくある株式会社の組織は、株主総会、取締役、監査役という機関で成り立っています(ほかにも類型は多々ありますが・・・。)。
株主総会は、出資者全員からなる機関です。
取締役は業務を執行し、監査役は執行を監督する役割を負います。
権利能力なき社団の組織
そして、権利能力なき社団も会社に類似の組織を備えています。
構成員全員からなる総会、総会の意思決定に基づいて業務を執行する執行機関(理事など)、その業務執行を監督する監査などです。
また、執行機関のうち団体を代表するものは代表者と呼ばれます。たとえば、マンションの管理組合などでは、理事長が団体を代表する代表者です。
なお、団体内部のルールや決まり事については、権利能力なき社団といいうるレベルの組織であれば、ほとんどすべてのケースで定款や〇〇会規約といった形で、成文化されているはずです。
目的(営利・非営利を問わない。)
権利能力なき社団には営利団体・非営利団体いずれもあります。
上記判例に示した成立要件に照らしてみても、権利能力なき社団の目的には制限がありません。
非営利を目的とすることはもちろん、収益事業を行うことも可能ですし(課税はされるが・・・)、収益を構成員に分配する目的(営利目的)で活動することも可能です。
解散と清算(残余財産の分配)
権利能力なき社団も、法人と同様、解散及び残余財産を清算することは可能です。
ただ、解散の要件(総構成員の同意を要するとの見解や特別決議で足りるとの見解がある)や清算の方法については議論があります(社団の債務に関する論点における有力説「類型化論」の影響も受け得ます。)。
特に、各構成員に残余財産の分配ができるかが、議論の対象ですが、一般的には、構成員全員の合意により、「共有持分を確定させた」うえで解散し、分配することを要すると解されています。
資格試験などでもっとも問われるのは、権利能力なき社団の財産や債務・登記をめぐる論点です。これらの論点については、次の各記事で解説していますので、ぜひご参照ください。
・権利能力なき社団の財産と債務~総有説~
・権利能力なき社団の登記の可否~最高裁昭和47年6月2日判決~
ここで関連記事を紹介!
入会地となっている山林の管理団体が権利能力なき社団であったとします。
地域人口がどんどん減ってきて、ついに団体の構成員が一人となってしまいました。この場合、財産はいまだ総有でしょうか、それとも個人帰属するのでしょうか。
また構成員がゼロとなった場合はどうなるのでしょうか。関連記事にて検討しました。