マンション管理組合とは

今回のテーマは、「マンション管理組合とは」です。

分譲マンションを購入すると、そのマンションの管理組合の総会に出席を求められたり、場合によっては理事などの役員になってほしいと要請されたりします。

マンション管理組合とは何かを知っておくことは、分譲マンションを購入する際、あるいはマンションで生活する場合に必要不可欠です。

そこで、本記事では、マンション管理組合とは何か、どんな団体なのか、どのような業務を担っているのか、などについて解説します。

マンション管理組合とは

マンション管理組合とは、区分所有建物(分譲マンション)の区分所有者全員で構成されるマンションの主体たる団体です。

分譲マンションにおいては、通常、一戸(専有部分)ごとにそれぞれ所有者が存在します。そして、その所有者のことを区分所有者といいます。

この区分所有者全員で構成されたマンション管理の主体となる団体のことをマンション管理組合と呼んでいます。

たとえば、101号室から504号室まで合計20戸の専有部分があるマンションにおいては、その各戸の所有者全員で構成されるマンション管理団体、ということになります。

なお、マンション管理組合は、分譲マンションの専有部分の所有者であるというだけでその構成員となります。分譲マンションの専有部分の所有を始めること=管理組合の構成員となること、と理解されます。

マンション管理組合の組織

上記のとおり、マンション管理組合は、区分所有者全員からなる団体です。団体である以上、その内部には一定の組織があります。そこで以下、マンション管理組合の組織について見ていきます。

まず、マンション管理組合の組織は、大きくは総会と役員(役員会)とに分けて考えることができます。また、役員ないし役員会は、一般には、理事からなる理事会、理事長、副理事長及び監事に分類することができます。

総会(区分所有者全体の会議体)

区分所有者全員の会議体であり、マンション管理組合の最高意思決定機関になります。株式会社でいえば、株主総会みたいなものです。

予算・決算の承認や役員の選任、管理費額や管理規約の決定・変更など重要事項の決定などを行う組織です。

一般的には、年に1回定期総会が開かれる他、臨時の用があるときには臨時総会が開催されます。

関連記事:区分所有とは
そもそも区分所有者ってなんだ?という方はこち他の記事をご参照ください。一般的な所有概念と区分所有概念との違いなどについて解説しています。

役員ないし役員会

次に、役員ないし役員会について見ていきます。

理事及び理事会

理事は、総会で選ばれた役員であって、理事会を構成するメンバーです。実際に管理組合の運営に汗をかく者といえます。

たとえば、総会開催の準備をしたり、議事録を作成したり、といった業務が割り当てられます。また、理事の中でも、たとえば会計担当理事など、会計業務に当たる理事などもいます。

理事会は、マンション管理組合の業務執行の決定を行う機関です。

管理組合の運営状況やマンションの管理状況などにつき討議を行ったり、総会にかけるべき事項を決定したりする業務を担います。

そのほか、たとえば、リフォーム申請の承認など、理事会で決すべき事項として管理規約ないし総会で決められた事項につき決定するのも、理事会の担う業務となります。

理事長・副理事長

理事長は、理事会の長です。一般的には理事による互選で選任されます。

理事長は、管理組合の業務を実際に執行する職責を負います。たとえば、対外的には、エレベーター保守契約の締結や損害保険契約などを担います。

また、管理組合内の問題として、管理費を滞納している滞納者に対して管理費の請求をしたり、マンション内のルールに違反する者に対して、その是正を求める措置などをとったりするのも、理事長の仕事です。

副理事長は、法律的には、理事長が事故などで業務を執行できない場合に、理事長に代わって業務執行を行うなどの立場に立ちます。

事実上は、理事長の横で、その補佐・サポートを行う職というイメージです。

監事

監事は、チェック役です。株式会社における監査役のような存在で、理事乃至理事長が不正を行っていないかなどをチェックする役割を負います。

管理組合の業務・役割

管理組合の業務は多岐にわたります。

たとえば、①管理組合の財政の管理(管理費尾請求や出納、予算・決算の作成等)、②マンションの敷地や建物の管理(補修や保守点検など)、③諸事務の管理(管理会社との折衝・協議や駐車場の運営管理など)などが挙げられます。

標準管理規約に規定された管理組合の業務の内容

管理組合がどんな役割を果たすのかを把握するのに参考となるのが標準管理規約という文書です。

この標準管理規約というのは、マンション管理組合の管理規約のモデルとなる規約で、国土交通省が公開しているものです。

この標準管理規約によれば、次の各事項が管理組合の業務として規定されています。

<標準管理規約単棟型第32条各号>
1 管理組合が管理する敷地及び共用部分等(以下本条及び第48条において「組合管理部分」という。)の保安、保全、保守、清掃、消毒及びごみ処理
2 組合管理部分の修繕
3 長期修繕計画の作成又は変更に関する業務及び長期修繕計画書の管理
4 建替え等に係る合意形成に必要となる事項の調査に関する業務
5 適正化法第103条第1項に定める、宅地建物取引業者から交付を受けた設計図書の管理
6 修繕等の履歴情報の整理及び管理等
7 共用部分等に係る火災保険、地震保険その他の損害保険に関する業務
8 八 区分所有者が管理する専用使用部分について管理組合が行うことが適当であると認められる管理行為
9 敷地及び共用部分等の変更及び運営
10 修繕積立金の運用
11 官公署、町内会等との渉外業務
12 マンション及び周辺の風紀、秩序及び安全の維持、防災並びに居住環境の維持及び向上に関する業務
13 広報及び連絡業務
14 管理組合の消滅時における残余財産の清算
15 その他建物並びにその敷地及び附属施設の管理に関する業務

 

マンション管理組合の財務

上記のようなマンション管理の業務には当然費用が掛かります。廊下の電球ひとつ変えるのにもお金がかかるわけです。

こうした管理に要する費用は、区分所有者からの拠出される管理費などによって賄われます。

また、大規模修繕などのために必要な費用は、別途大規模修繕積立金で賄われるのが一般的です。

マンション管理組合には、効率的にマンションを関していくために、このような団体の財産・お金をどのように使うか、その財務をどうするか検討・決定していくという役割を担うことが求められます。

自主管理と委託管理

ここで、マンション管理につきよく出る単語「委託管理」と「自主管理」について簡単に説明をしておきます。その管理組合が「委託管理」なのか「自主管理」なのかによって、管理組合の在り方は大きく変わります

委託管理について

上記のように、マンション管理組合が担う業務は多岐にわたることになりますが、管理組合は上記のような業務を管理組合外の第三者に委託することができます。

要は、管理組合がお金を払って、マンション管理会社に仕事をお願いするわけです。

これを委託管理といいます。また、マンション管理組合の業務の「一部」を管理会社に委託する場合を特に「一部委託」などと呼ぶことがあります。

メリットは、もちろん、管理組合の業務が楽になること、マンション管理につき、専門性を有する者による支援を受けられることです。

他方、デメリットは、お金がかかること。また、管理会社の仕事のレベル・質によっては、管理組合と管理会社間とでトラブルが発生するといったこともあります。

委託管理の場合、管理会社が適正に仕事をしているかなどをチェックするのが管理組合の重要な仕事になります。

自主管理について

自主管理は、管理会社などの第三者に委託せず、マンションの構成員で、管理組合の運営・業務を行うことを指します。

メリットとしては、管理会社に支払う費用が不要であるという点、自分たちのマンションを自分たちで管理しているんだという自主性が醸成される点です。

デメリットとしては、業務範囲が広く、役員の負担が重たいという点、マンションの住民らが法律上・運営上の知識・経験に乏しい場合があり、法律などに適合しない運営がなされる場合が往々にしてみられるといった点です。

自主管理の場合は、管理組合は、直接にマンションの管理を実施する団体と位置付けられます。

法人格の有無

最後に、法人格についてです。

上記の通り、マンション管理組合は、区分所有者全員からなる「団体」ですが、一口に管理組合といっても、その中には、法人格を有さない団体と法人格を有する団体とがあります。

権利能力なき社団

法人格を有さない管理組合は、多くの場合、「権利能力なき社団」として扱われます。

権利能力なき社団というのは、団体としての実質を備えているものの、法人格を取得していないため、形式的に法人とは扱えない団体のことです。

現在、日本のマンションの管理組合の多くは法人格を有さない「権利能力なき社団」です(裏付けは取っていませんが、十中八九そうです)。

関連記事:権利能力なき社団とは
権利能力なき社団について解説した記事です。法人格がない管理組合の契約名義などについても解説しています。

法人格のある管理組合が増えつつある

上記の通り、現時点においては、日本のマンション管理組合の多くは法人格を有していません。

しかし、権利能力なき社団である管理組合には、「理事室」などマンションの専有部分を管理組合で所有しているという場合に、管理組合名義で不動産登記ができないなどの不都合があります。

また、預金通帳の作成につき、名義人を団体名だけとすることができないなどの不都合も指摘されます。

管理組合を法人化(区分所有用47条参照)すれば、上記のような不都合を避けられるため、大規模マンションを中心に、法人格を有するマンション管理組合が増加しつつあります。

関連記事:法人格とは
法人格とは何か、法人格取得の一般的なメリットなどについて解説した記事です。
参照:区分所有法3条
区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分(以下「一部共用部分」という。)をそれらの区分所有者が管理するときも、同様とする。
参照:区分所有法47条1項2項 
1 第三条に規定する団体は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で法人となる旨並びにその名称及び事務所を定め、かつ、その主たる事務所の所在地において登記をすることによつて法人となる。
2 前項の規定による法人は、管理組合法人と称する。

補足:管理組合がないケース

以上、マンションの管理組合について見てきましましたが、分譲マンションであって管理組合がないケース(事実上機能していないケース)について、補足します。

居住目的の一般的なマンションでは、団体としての管理組合が存在するのが一般的です。しかし、極めて小規模のマンションなどでは、事実上、管理組合がないケース(法律上の団体としては存在するが、管理組合としての実体が存在しないケース)というのも存在します。

また、リゾートマンションなど、居住目的ではないマンションについても、実体として管理組合がないケースがしばしば見受けられます。

後者の場合、往々にして、分譲業者などの業者が管理者となっている、区分所有者らが全員で管理を委託しているなどの法律構成の下、業者がマンションの管理をしているケースが多いです(そして、財務・管理上の問題も生じがち。)。

このように、「それまで管理組合がなかった、業者が管理をしていた」という場合において、管理組合による管理を実現するには、管理組合の設立及び財源の確保(業者が区分所有者が拠出してきた預貯金を管理している場合にはその引き渡し)などの請求が急務になります。

ただ、実際上、相当大変な手続となることは想像に難くありません。手元に管理組合を設立するための費用となる財源もないし、手続自体もちんぷんかんぷんなことがほとんどでしょう。

マンション管理組合の専門団体やマンション管理法務に詳しい法律家などに相談されることをおすすめします。