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民法94条:通謀虚偽表示~要件効果と第三者、類推適用まで解説

今回のテーマは、通謀虚偽表示についてです。

民法94条の基本から、第三者論、試験で差がつく判例の整理(類推適用)までをわかりやすく解説します

特に、同第2項は、いわゆる権利外観法理を学ぶ上での格好の材料であることから、民法総則でも重要な条文としてクローズアップされます。

現在でも民法総則においては、重要なテーマの一つです。

※なお、通謀虚偽表示については解説分量が多くなりましたので、テーマを大きく3つに分割しています。各テーマごとに、一つ一つ、論理が積み重なっていきます。

  • テーマ1 通謀虚偽表示とは?~民法94条1項~
  • テーマ2 民法94条2項の第三者について
  • テーマ3 民法94条2項の類推適用について

通謀虚偽表示とは?~民法94条1項~(テーマ1)

通謀虚偽表示とは、相手方と意を通じて行った虚偽の意思表示です。定義としてのポイントは、次の二つ。

①「意を通じている」という点と、②「虚偽の意思表示である」という点です。

通謀虚偽表示を一言でいうと、当事者が①意を通じて行った、②虚偽の意思表示です。

「示し合わせて行った嘘の合意」ということになります。

①ここで「意を通じる」というのは、当事者が互いに、その意思表示が真意でないことを知っている、という状態を指します。

②「虚偽の意思表示」というのは、その当事者の真意に反する合意、という意味です。

以下、具体例、通謀虚偽表示の要件・効果を順に見ていきましょう。

通謀虚偽表示の具体例

通謀虚偽表示の典型例は、不動産の仮装売買です。

実際とは違うのに、土地や家屋の名義のみ変えておく、というものです。

通謀虚偽表示で典型例としてあげられるのは、不動産の仮装取引です。取引を仮装しようとする当事者間で意を通じてなされる意思表示が例としてあげられます。

親子など、親族間でなされることもしばしばです。

例がよくないかもしれませんが、最初に、親と子供が、「ままごと」の延長線上で、「自宅不動産」を1億円で売り買いする売買契約書を作成したと仮定しましょう。

これは、「ままごと」ですから、その契約書には真意でない合意が書かれているにすぎません。そのため、この親子の契約(双方の意思表示)は、「通謀虚偽表示」に該当しえます。

このケースではこれを「ままごとの延長」と仮定したので、もしかしたら、「ばかばかしいな」と感じられたかもしれません。

しかし、仮にこの契約書が、60歳の親と30歳の子との間で作られていたとしたらどうでしょう。とたんに何か怪しい匂いがしてきますね。

実際には当事者間で売買をする気が無いのに、親子で不動産の売買をしたことにしているのではないか、そう思えてきます。

ここでは、そんなこと実際にあるの?という疑問が生じるかもしれませんが、実際にありえます。

 

具体例

たとえば、Aさんが借金まみれで、このままだと、いずれ、Aさんの自宅不動産が借金の形として、差し押さえてしまいそうだ、という場面を想定します。

通常、借金の差押えの対象となるのは、債務者本人の財産ですから、こうした場面では、Aさんが不動産の差し押さえを免れる目的で、名義を変更したい、という動機が生じることがあります。

Aさんが、その子であるBさんと示し合わせて、実際に所有権を移転させる意思はないのに、不動産売買契約書を作成し、これをもとに、不動産の登記名義を変える等の行動にでる、といったことが実社会では起こりえるのです。

しかし、このAさんBさんの契約は、差押え回避目的であり、そこに、不動産の所有権を変えるという意思がありません。また、双方が、その真意を知りながら、契約書作成に至っています。

したがって、このAさんBさんの売買契約は通謀虚偽表示に該当します。

通謀虚偽表示が行われる場面

この通謀虚偽表示は、親類間などで行われることが多いです。

配偶者間でのみのみならず、親子間、親戚間あるいは、借金などにより危機的状態にあるグループ会社間などでも行われえます。

また、民事における差押回避目的の場合のほか、税金滞納にかかる差押え回避を企図して行われることもあります。

虚偽表示の要件・効果

ここで、虚偽表示の要件・効果を見ていきましょう。

二つの要件

まず、民法94条を確認します。

民法94条1項
相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。

94条1項は、条文としてはシンプル。要件は次の二つです。

① 表意者の真意とは異なる、意思表示がなされたこと
② 両当事者が意を通じていたこと

すでに具体例として見てきましたが、売買契約を例にすると、①AとBが真実売買をするつもりが無いのに、②意を通じて売買の意思表示を仮装した、の二点が、通謀虚偽表示の要件です。

 

通謀虚偽表示は、当事者双方が真意でないことを知りながら意思表示をする場合です。

これに対して、「心裡留保」は、当事者の一方のみが、意思表示が真実でないことを知っている場合です。

そこで、心裡留保は「単独での虚偽表示」などと呼ばれることがあります。

なお、ここにいう「虚偽」とは、商品の原産地を違法に偽装するなど、そういった意味合いのものではなく、あくまでも、当事者の内心「真意」と「表示」との不一致を指します。

 

 
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上記の通り、通謀虚偽表示は意思表示に関する概念です。

そして、意思表示とは何でしょうか?法律行為の中核をなす概念ですが正確に理解している方は多くありません。

改めて意思表示の概念につき、ご確認いただければ幸いです。

意思表示について

 
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虚偽表示は、上記の通り二人以上の人物が「意を通じた」との点が要件となります。

これに対して、単独の虚偽表示ともいわれる概念があります。これが心裡留保です。

虚偽表示と心裡留保は双方、内心的な意思を欠いていることを表意者が知っているという点で共通します。

概念整理に、心裡留保に関する記事も併せて読んでいただけますと幸いです。

・心裡留保~民法93条~

 

効果~無効~

次に効果を確認します。

通謀虚偽表示は無効です(民法94条1項)

初めから効力が無い

上述の民法94条1項記載のとおり、通謀虚偽表示にかかる意思表示は無効です。

AさんBさんとの間で仮想の売買契約が結ばれたとしても、その売買契約は初めから無効です。

仮装の売買契約に基づいてAが不動産の登記名義をBに移転してしまっていた後でも、当該売買契約は無効である以上、AはBに対し、所有権に基づいて、不動産名義を元に戻せと主張できます。

たとえば、売買契約締結後、後になって、Bさんが、その契約書の存在を奇貨として、Aに、「いや、あの不動産はもう売買で、俺のものになっている」と主張したとします。

この場合でも、Aさんは、AB間の契約につき、上記通謀虚偽表示の要件に該当する事実を証明できれば、AさんはBさんから不動産を取り戻すことができます。

上記民法94条1項は、通謀虚偽表示にかかる意思表示は「無効」としています。
通謀虚偽表示には、「契約当事者間において、内心に合致する意思がどこにもない」からです。だれの真意にも合致しない契約につき、「一応有効と扱う」といった法擬制をする必要はありません。
通謀虚偽表示が行われる場面では、真意において、その法律効果の発生をだれも望んでいないのですから、その契約を法的に保護する必要は無く、民法94条1項がこれを「無効」と定めるのは、ごく自然な発想に基づくものといえます。

虚偽表示における第三者 ~民法94条2項直接適用の場面~(テーマ2)

通謀虚偽表示は、無効です(民法94条1項)。

しかし、通謀虚偽表示があっても善意の第三者は保護されます。「通謀虚偽表示だから94条1項に基づき無効だ」という主張は「善意」の「第三者」には対抗できません(民法94条2項)。

ここで改めて、通謀虚偽表示について定めた民法94条を確認します。

民法94条1項
相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。
民法94条2項
前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。

上記規定にあるように、民法94条2項は、通謀虚偽表示の無効につき、善意の第三者に対抗することができない、と定めています。

この意味は、当該意思表示が虚偽であることを知らなかった第三者には、民法94条1項に基づく「無効」を主張できないという意味です。

以下、94条2項の趣旨や直接適用の場面及び「第三者」の意義について見ていきます。

民法94条2項の適用場面・趣旨

まず、民法94条2項の趣旨や適用場面を確認します。

趣旨・目的

民法94条2項の趣旨は、通謀虚偽表示によって生じた外観を信じて取引に入った第三者を保護して、取引の安全を図る点にあると説明されます。

その第1項において通謀虚偽表示を無効としつつ、第2項は、通謀虚偽表示によって生じた外観を信じて、新たに取引関係に入った第三者を保護する点に目的があります。

たとえば、仮装取引につき、当該仮装取引が本物の取引だと信じて、新たに取引関係に入った者は保護すべきだ、といった考え方です。

これは、後に紹介する権利外観法理という考え方に立脚します。

適用場面の具体例

具体例をみておきましょう。

たとえば、Aさんを売主、Bさんを買主とする不動産の仮装取引が行われたところ、その仮装取引を信じたCさんが、Bさんとの間でその不動産の売買契約を締結したとします。

AさんBさんの間の取引は、無効ですから、Aさんは、BC間の契約に関わらず、所有権に基づいて、Cさんに不動産はAのものだ、と言えそうです。

しかし、ここで、Cさんが、民法94条2項に定める「善意の第三者」に該当する場合、Aさんは、Cさんに対して、AB間の契約が無効であるとは主張できません(対抗することができません)

Aさんは、契約の無効を主張できない以上、所有権に基づいて、Cさんに不動産を引き渡せ、あるいは名義を元に戻せ、などと言えない、ということです。

この場合、勝手に譲渡したBさんに対して、Aさんは損害賠償請求できると考えられますが、その話と所有権の帰属の別の話の話となります。

第三者保護の要件

民法94条2項が定める第三者保護のための要件は、大ざっぱに言えば、次の二つです。

  1. 通謀虚偽表示にかかる意思表示につき善意であること
  2. 法律上の利害関係を有するに至った者であること

この二つの要件が満たされる場合、通謀虚偽表示における表意者は、当該第三者に対して、その無効を主張し得なくなります。

①善意について

ここで、「善意」というのは、「知らなかった」ということを意味します。上記例ではAB間の取引が仮装であると知らないことを指します。

なお、ここでは、第三者について、第三者に「無過失」までは要求されていない、という点は覚えておくべきポイントです。Cさんに過失(≒不注意)があると言える場合でも、Cさんは保護の対象となります。

ここで無過失まで要求されないのは、通謀した表意者の帰責性が高いため、第三者保護要件として、Cさんに善意の他に無過失まで要求するのは、価値判断上のバランスを欠くからです。

②「法律上の利害関係を有するに至った者」

「法律上の利害関係を有するに至った者」の定義づけは、複数ありそうですが、そのポイントは、「通謀虚偽表示により変動した権利や財産について、新たに権利義務関係を有するに至った」ことです。

「その権利」について法律上の利害関係が生じていないとダメ。第三者にはあたらない。

たとえば、AさんBさんの不動産の仮装取引を信じて、Bさんとの間で当該不動産を購入したCさんは、ここにいう「第三者」に該当します。

その不動産について、「売買で所有権を取得する」立場となったCさんは、当該不動産について法律上の利害関係を有する。

他方で、AさんBさんの不動産の仮装取引を信じ、「Bさんは不動産を持つ資産家だ」と信じたCさんがBさんとの間で、不動産とは全く無関係な取引(融資)を行ったとします。

この場合、Cさんは、仮装取引を信じた者ではあるものの、通謀虚偽表示の対象となった不動産について権利義務関係を有するにいたったとはいえません。

そのため、Cさんは、民法94条2項が定める第三者には該当しない、ということになります。これは「事実上の利害関係しかない」とも評価されるかもしれません。

 

民法94条2項類推適用(テーマ3)

民法94条2項は、直接適用の場面より、むしろ、類推適用の場面で真価を発揮します。ここでは、いわゆる権利外観法理という考え方が機能します。

民法94条を直接適用する場合についての説明については第2テーマで説明した通りですが、民法の勉強で同条が強くクローズアップされる場面は、同2項を類推適用する場面です。

そもそも、民法94条2項が直接適用される場面においては、同1項の定める「通じて」(通謀)の要件が満たされることが前提です。

しかし、世の中には、意を通じて仮装がなされたという場面以外でも、権利の外観を信頼した第三者を保護すべき、という場面は存在します。

そこで判例上展開されたのが、民法94条2項の類推適用です。

以下、類推適用の根拠・場面及び判例の内容を見ていきましょう。

権利外観法理

民法94条2項の類推適用の前提として、真実とは異なる見た目(外観)を作った者に非がある場合、その見た目を信じた者を保護しようね、という価値観があります。

虚偽の外観の作出につき、真の権利者に帰責性があるにもかかわらず、その外観を信じて取引に入った者が何ら保護されないとすると、あまりに酷ですよね。

そこで、判例は、この価値観に基づき、登記などの外観を信じて取引に入った者に対しては、その保護を図る道を開いています(いわゆる権利外観法理という理論です。)。

 
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上記のような判例の考え方は、権利外観法理という考え方に基づくものです。

権利外観法理については次の記事で詳細に解説しています。

是非一度ご参照ください。

権利外観法理とは?

真実と異なる外観が作出されていたものの直接適用は不可のケース

たとえば、名義移転につきAB間で意を通じたということはなかったものの、Bが、Aの所有不動産につき自己の名義のものとしており、Aもこれを認識しながら容認していたという場合を想定します。

ここで、Cが登場して、Bから当該不動産を買い受けた場合、民法94条2項を直接適用できるでしょうか。

もうお分かりかもしれませんが、この場合、AB間で意を「通じて」意思表示がなされた、との要件が満たされない為、民法94条は適用できません。

したがって、直接適用ではCは保護されないことになります。

通謀の立証までは難しいが・・あやしい、というケース

また、真実、AさんとBさんとの間では通謀虚偽表示が行われ、不動産がB所有であると仮装されていたが、第三者(Cさん)において、AさんBさんの通謀(「意を通じて」を立証できない場合はどうでしょうか。

AさんBさんの関係性などからして、通謀虚偽表示がなされていそうな「怪しいケース」においても、民事訴訟のルールにのっとると、Cさんが、「「意を通じて」の部分に該当する要証事実を証明できない場合、裁判上、Cさんは、民法94条1項の直接適用では保護されません。

不動産がB所有であるという真実とは異なる外観があり、これをCさんが信じていたとしても、「通謀」を証明できない場合、Cさんは裁判では負けてしまうのです。

第三者保護の必要性

しかし、上記のような場面でにおいても、B名義の登記を信頼して取引に入った第三者たるCを保護すべき要請(価値観)があるのは、虚偽表示がなされた場面と変わりありません。

そこで、判例は、上記のように94条が直接適用できない場面においても、同2項を類推適用して、第三者の保護を図るという理論を展開しました。

94条2項類推適用の判例紹介

以下、94条2項を直接適用しえないケースにて同項を用いて事案を処理した判例⑴⑵を紹介します。ここから先はステップアップレベルです。

⑴昭和45年9月22日最高裁判決
この判決は94条2項のみを摘示した判決です。そこでは第三者保護要件として無過失は要求されていません。

⑵昭和43年10月17日最高裁判決
この判決は、民法94条2項の他、民法110条を摘示した判決です。そこでは第三者保護要件として無過失も要求されています。

昭和45年9月22日判決について

まず。最高裁昭和45年9月22日判決。この判例は、まさに民法94条2項を類推適用した事案です。

この判決は、94条が定める保護要件の通り、第三者保護のために第三者が無過失であることは要求していません。

最高裁昭和45年9月22日判決

「不実の所有権移転登記の経由が所有者の不知の間に他人の専断によってされた場合でも、所有者が右不実の登記のされていることを知りながら、これを存続せしめることを明示または黙示に承認していたときは、右94条2項を類推適用」する。
「所有者は、・・・その後当該不動産について法律上利害関係を有するに至った善意の第三者に対して、登記名義人が所有権を取得していないことをもつて対抗することをえないものと解するのが相当である。」
「けだし、不実の登記が真実の所有者の承認のもとに存続せしめられている以上、右承認が登記経由の事前に与えられたか事後に与えられたかによって、登記による所有権帰属の外形に信頼した第三者の保護に差等を設けるべき理由はないからである」

最高裁昭和43年10月17日判決について

次に、最高裁昭和43年10月17日判決。これは、民法94条2項と併せて、110条を援用した事案です。

この判例のケースでは、94条2項のみならず110条の法意が加味されて第三者保護要件に無過失まで要求されています。

最高裁昭和43年10月17日

この判決は、「不動産について売買の予約がされていないのにかかわらず、相通じて、その予約を仮装して所有権移転請求権保全の仮登記手続をした場合」につき、次のように判示しました。
「外観上の仮登記権利者がこのような仮登記があるのを奇貨として、ほしいままに売買を原因とする所有権移転の本登記手続をしたとしても、この外観上の仮登記義務者は、その本登記の無効をもつて善意無過失の第三者に対抗できないと解すべきである。」
「けだし、このような場合、仮登記の外観を仮装した者がその外観に基づいてされた本登記を信頼した善意無過失の第三者に対して、責に任ずべきことは、民法94条2項、同法110条の法意に照らし、外観尊重および取引保護の要請というべきだからである。」

(※なお、この判例を見て『「法意」ってなんだよ?類推適用じゃダメなのかよ』、という突込みは控えましょう。法意という言葉の意味が広すぎるので、答えは永久にでません(私見))。

判例について若干のコメント

なお、上記のように第三者保護要件につき善意のみとするのか、善意に加え無過失を要するのかは、ケースによって異なります。

これは、判例が本人の帰責性の程度と第三者保護要件の重さにつき、上手いことバランスを取ろうとしているためです(私見)。

判例(最高裁) 外観作出への帰責性 第三者の保護要件 備考
昭和45.9.22 (不実の登記を放置・承認) 善意のみ 94条2項の単純類推
昭和43.10.17 (仮登記のみ承認、本登記は勝手にされた) 善意・無過失 94条2項+110条の法意

民法94条2項類推適用にかかる事案・判例の整理については種々の見解が有り得るところですが、考え方の一つとして、次のような整理もありえると思われます(私見)。

要は、本人の帰責性と、第三者保護要件とのバランス論です

本人の帰責性が大きい⇒第三者保護要件は善意のみ
本人の帰責性が小さい⇒第三者保護要件は善意・無過失

これを上記二つの判例につき見ていきましょう。

善意のみを要求した前者の判決について

94条2項のみ使った最高裁昭和45年判例のケースは、本登記につき、所有者が承諾していた事案です。

所有者に「通謀」と同レベルの帰責性があるとの価値判断が根底にあるものと思われます。

真の権利者の帰責性が大と評価されるため、94条2項で定める以上に第三者保護要件を厳しくする必要はありません。

判例では、「登記による所有権帰属の外形に信頼した第三者の保護に差等を設けるべき理由」がないとされ、単に94条2項が類推適用されています。

善意・無過失を要求した後者の判決について

他方で、110条を援用した後者の判例においては、「通謀」と同視できるレベルの帰責性までは表意者にはないとの価値判断があったのではないか、と思われます。

この事案では、「不動産について売買の予約についての仮装」(仮登記)がなされていたものの、本登記に関しては、所有者の承諾は認定されていません。

売買予約の仮登記があるにせよ、売買の予約が実行されなければ、登記上、所有権は元の所有者のままです。買主に移転しません。

そうすると、本登記の外観を仮装した場合や、所有者が仮装の本登記に承諾を与えた場合に比して、所有者の帰責性は小さいとも評価できます。

その結果、バランス論として、第三者保護要件を加重する要が生じ、判例は、110条の法意を援用し、第三者に無過失までを求めている、と理解されます。

※なお、上記の整理はもちろん私見です。関連各判例につき、種々の整理の仕方があること、ここで留保しておきます。