今回のテーマは民法が規定する「共有」についてです。
検索からこの記事に来ていただいた方の中には、合有や総有ってなに?単純な共有と何が違うの?と疑問に思っていらっしゃる方も少なくないかもしれません。
そこで、今回は、「合有」「総有」とともに、共有概念を説明していきます。
その違いを理解することが共有概念の理解に役立ちます。
共有とは
共有を理解するポイントの一つは、権利者が複数であるということです。
このことは、後で説明する狭義の共有、合有、総有のどの場合でも共通します。
共有の対象となることが多いのは所有権ですが、所有権以外の財産権も共有の対象となり得ます。
なお、所有権を対象とする場合を単に「共有」と表現するのに対し、所有権以外の財産権を対象とする場合には、これを区別して「準共有」と表現します。
3つの形態
この3つを併せて広義の共有といいます。
狭義の共有
狭義の共有は、もっとも一般的な共有です。
共有者が、同一の目的物に対して、①それぞれ持分を有し、かつ、②その持分を自由に処分しえる状態を指します。また、③いつでも分割請求が可能なのも特徴の一つです。
合有・総有は、狭義の共有に比して、上記①ないし③の点で差異を有します。
具体例
たとえば、AさんからEさんが、ある財産(500万円相当)を5分の1ずつ共有(狭義)していたとします。
この場合、Aさんは、自己の持分(100万円相当)を第三者に処分することが可能です。
さらに、Aさんは、「当該共有財産を分割しろ」などと請求することができます
夫婦による不動産の共有
実生活において見かけることの多い狭義の共有は、夫婦でマンションの所有権を持分2分の1ずつに分け合っているといったケースです。
この場合も、①夫婦双方が持分を有しますし、②法律上はそれぞれこれを自由に処分できます。
たとえば、夫は自分の長男に、妻は長女に持分を処分するといったことも可能です。
また、この場合において、夫と妻は、相手に対して、不動産を分割しろ、などと請求することができます。
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民法は狭義の共有に関して、細やかに条文を規定しています。
共有物の分割もその一つです。ぜひ一度条文などをご確認願えれば幸いです。理解が深まると思います。
・狭義の共有に関する民法の諸規定~第249条~第264条
合有とは
合有というのは、一定の権利につき、各権利者が①それぞれ持分を有するものの、②その持分の自由な処分権はなく、かつ③持分の分割請求が否定される形態の共有です。
①各権利者に持分があるので、団体からの脱退時に、各権利者は、持分の払戻請求が可能です。
他方で、財産の処分などにつき、②③団体的制約に服します
組合契約における権利は合有
民法上の組合契約において、各組合員が組合の財産上に有する権利は、この合有であると解されています。そのため、組合員は、その持分を自由に処分することはできず、かつ分割請求をすることもできません。
もっとも、持分自体は観念され、組合員は、組合からの脱退時において、持分の払戻請求をすることができます(この持分のことを特に潜在的持分ということがあります。)。
具体例
たとえば、経営者Aさん~Eさん5人が集まって、それぞれ100万円ずつ出し合って、街を緑化する慈善団体(組合)を作ったとします。その上で、みんなで、苗を5000株買いました。
この場合、AさんからEさんはそれぞれ5分の1ずつ持分を持っています。潜在的には、一人あたり苗1000株分の持分を有するはずです。
しかし、「合有」においては、各自に持分の自由な処分権がありません。
そのため、たとえば、Aさんが「苗1000株分は自分のだから」との理由で、個人的にこれを第三者たるFさんに譲渡する、といったことはできません。
ただ、Aさんは、上記団体(組合)を脱退するとき、自分の持分の払い戻しを請求できます。
脱退時における総財産の評価額が250万円となっていた場合、その5分の1たる50万円を払い戻せと団体に請求できる計算になります。
総有とは
総有とは、一定の権利につき、各権利者(団体構成員)が①そもそも持分を有さず(原則)、②当該持分の自由な処分権もなく、かつ③分割請求も否定される共有状態を指します。
大雑把に言えば、各自の権利ではなく「みんなの権利」(総体的な権利)という意味合いになります。
総有財産の管理・利用
総有財産の具体例としては、村落(入会団体)の住民全員に帰属する山林や権利能力なき社団に属する財産などが挙げられます。
この総有財産の管理・利用は、団体の意思決定に従います。
団体みんなで、団体財産を何に使うか、処分するかなどを決定するということです。
持分を観念しない
総有の最も特徴的な性質は、各人の持分を原則的に観念しない、ということです。
たとえばAさんからZさんまで多数の構成員がいる場合において、団体財産のうち、Aさんの権利がどの程度に及ぶのか、Bさんの権利がどの程度に及ぶのか、などを観念しないということです。
みんなの権利として相対的に把握されます。
持分を観念しませんので、脱退時にも、構成員は持分の払戻は請求できません。合有の場合との大きな違いです。
権利能力なき社団の財産は,実質的には社団を構成する総社員の所謂総有に属するものであるから,総社員の同意をもって,総有の廃止その他右財産の処分に関する定めのなされない限り,現社員及び元社員は,当然には,右財産に関し,共有の持分権又は分割請求権を有するものではないと解するのが相当である。
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権利能力なき社団の構成員が有する財産は「総有」と解されます。
現代においては、この権利能力なき社団をめぐってです。総有概念の知識が必要となることが多いです。
一度ご参照いただけますと幸いです。
まとめ
広義の共有 | 持分 | 構成員の処分権 | 分割請求 |
狭義の共有 | 有り。 | 有り。 | できる |
合有 | 有り。ただし潜在的。 | 無し | できない |
総有 | 無し | 無し | できない |
なお、「合有」の場合、脱退時に持分の払渡請求が可能ですが総有の場合は不可能です。