遺産分割について

今回は、遺産分割とは何かについて説明をします。

弁護士も、当事者の代理人となってこの遺産分割協議に参加したり、遺産分割協議書を作成したりするなどの仕事をしています。

遺産分割手続とは

遺産分割手続は、相続における最も重要な手続きの一つです。

被相続人(亡くなった方)が他界すると、その共同相続人間において、遺産を共有している状態が形成されます。

つまり、複数の相続人が居る場合、相続財産は相続開始と同時に共同相続人に承継され、その相続財産が共有になります。一旦は、相続人みんなのもの、ということになるわけです。

ただ、この共有状態は過渡的なものと言われます。一時的な状態といってもいいかもしれません。

遺産分割の手続きは、この過渡的・一時的に共有状態にある遺産を相続人らに分割帰属させる手続きとなります。

遺産分割を行うことで、確定的に誰が遺産の一部を所有するかが決まるわけです。

遺産分割の基準

基本的には法定相続分にそって分割していくことになります。

家庭裁判所においても、分割の判断に際しては、まずは法定相続分を基準とします。

ただ、これに合致しない遺産分割協議も有効です。全員の合意があればいいわけです。

もっとも、民法906条は、「遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。」と定めており、遺産分割協議に際しては実質的な公平確保が志向されます。

遺産分割の遡及効

遺産分割協議が成立すると、共同相続人間で共有状態にある権利がだれに帰属するかが確定しますが、この効力は、相続が開始された瞬間から遡及的に発生します。

つまり、遺産分割でAさんがある土地を取得し場合、民法上、Aさんは相続開始のときからその土地の所有者であったことになります(但し、第三者の権利を侵害することはできない。)。

遺産分割はいつまでにやらなければならないか。

民法において、遺産分割を行う期限は設けられていません。その結果、10年前、20年前の相続につき、遺産分割が未了ということも多々あります。

しかし、共有状態を放置し続けることは望ましくありません。

長期間経過すると数次相続が発生し、遺産分割がより複雑になる可能性があります。相続人の数が増え、それぞれ利害を異なるとなると、一筋縄で解決というわけにはいかなくなります。

相続が発生して遺産がある場合、早期に遺産分割を負えるのが望ましいです。

※なお、相続税については、相続開始から10カ月以内の申告・納税が原則として必要です。

前提事項について

遺産分割を有効に成立させるためは、まず、遺産分割協議の前提事項として、相続人の範囲や遺産の範囲を確定することが必要です。

相続人の範囲や遺産そのもの争いがある場合、遺産分割協議や調停が困難となり、まずは、相続人の範囲や遺産の範囲を確定する手続を経る必要があります。

したがって、遺産分割協議に先立ち、まずは相続人の範囲・遺産の範囲に争いがないかどうかを確認することが重要です。

なお、遺産に付随する事項(例: 遺産から生じた果実や管理費用、葬儀費用など)は遺産分割とは別の問題ですが、同時に解決することが望ましいです。

遺産分割の禁止について

遺産分割が禁止される場合もあります。以下のケースで遺産分割は禁止されます(民法908):

・遺言で遺産分割を禁止した場合
・共同相続人間で遺産分割を禁止する契約をした場合
・家庭裁判所が遺産分割を禁止した場合

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