今回は、「心裡留保」が生じた場面における第三者の保護について説明をします。
やや奥まった話ですので、具体的に理解しておくことが肝要です。
民法93条2項の適用場面
まず、民法93条2項の適用場面を想定しましょう。
意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方が表意者の真意を知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。
【民法93条2項】
前項ただし書の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。
心裡留保が生じる場面
ここでは、AさんとBさんがメールで「車を10万円で売買する」という契約をしたところ、実際には、「10万円で売る」というAさんの意思表示が心裡留保と評価される場合を想定します。
この場合、AさんBさんの売買契約は原則として有効なものと扱われますが、Bさんが、Aさんの真意を知っている場合には契約は無効となります。
契約が無効となる場合、車はBさんの所有になりませんし、BさんはAさんに車を引き渡せ、とはいえません。
第三者が登場する場面
上記の場面で、第三車を登場させてみましょう。
Bさんが、Cさんに、Aさんとのメールのやりとりを見せて、「俺はAさんから車を買った、もう車の整備もばっちりした、この車、15万円でCさんに譲るよ」と申し向け、Cさんがこれに応じて、Bさんに15万円払ったとします。
この場面では、AさんBさんの心裡留保で、AB間の契約は無効とされますが、ここに、あらたに第三者であるCさんが登場しています。
こうした場面で、Cさんは保護されるでしょうか、保護されるとしてどのような要件をみたしていなければならないでしょうか、この点について規定したのが、民法93条2項です。
第三者の保護について
結論を言えば、第三車は善意であれば保護されます。
上記の例でいえば、Cさんが、Aさんの心裡留保につき善意(「知らない」ということを意味します)であれば、Cさんは保護されます。
この場合、Cさんは、Aさんから車を返せと言われても、Aさんに引き渡す必要はありません。Aは自分の意思表示が心裡留保であったことをCさんに主張できない(対抗できない)からです。
念のため述べておくと、AさんBさんとの関係性においては、「契約は無効」ですので、AさんはBさんに「売買代金」としてはこれを請求することができません(有効な売買契約が無い)。
しかし、Aさんは、Aさんの意思表示が心裡留保であることを知りながら、さらにCさんに車を転売したBさんに、故意または過失があるとして、不法行為責任に基づいて、損害賠償請求権を行使する、などの手当をしていくことが考えられます。
心裡留保における第三者の保護に関しては、2020年の民法改正前は、「民法94条2項」という規定を類推適用して第三者の保護を図る、としてきました。
転得者につき、心裡留保につき、善意(知らなかった)場合に保護される、との理論を解釈で導いてきたわけです。
現状、今般の民法で、上記の点が条文によって手当てされていますので、民法94条2項を類推適用とする、という操作は不要になっています。
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第三者保護の理由~民法93条2項の趣旨を理解する~
上記のように、心裡留保につき、民法は「善意の第三者」を保護する規定を置いていますが、民法がこの規定をおいた趣旨はなんでしょうか。
善意の第三者の取引の安全
それは、善意者の取引の安全を図るためです。
利益状況に照らしてみても、元はと言えば、本心でないことを言ってトラブルを招いたのはAさんです。
このAさんと善意のCさんとの対比においては、Aさんの利益を図るべき状況ではありません。
善意の第三者が保護されないとどうなるか
上記の例において、15万円をBさんにしはらった善意のCさんが何ら保護されないとすると、どうなるでしょうか。
あとで、Aさんから、「心裡留保で、Bへの車の売買は無効だ、所有権は俺が持っている」と主張されると、CさんはAさんに車を引き渡さなければならない事態となってしまいます。
それでも、この場合において、Cさんは、「Bさんに15万円を返せ」と言えるかもしれませんが、Bさんがドロンしてしまうとそれまでです。
これではあまりに善意の第三者であるCさんにとって、酷な結論です。
こうしたCさんの取引の安全を図るべく、民法は93条2項により、善意の第三者の取引の安全を図ったのです。