権利能力なき社団は、社会で実在・活動しています。
しかし、法人格がないことから、実務的な場面でば、若干、法人と取り扱いを別にします。
現実の社会で、権利能力なき社団はどのように取り扱われるのでしょうか。
以下、契約、銀行預金、裁判3つの場面を見ていきます。
契約名義について
その場合、「団体名+代表者名+印」で当事者名を表記するのが通例です。
権利能力なき社団が契約をしようとするとき、あるいは同社団を相手方として契約をしようとする場合に、疑問点として挙がることが多いのが、契約名義がどうなるかです。
具体歴には、社団が賃貸借契約を締結するときや不動産売買契約を締結するときに問題となりえます。
契約書や領収証の名義の一般的な記載方法
たとえば次の例をご参照ください。
契約書や領収証に権利能力なき社団を表記したいときは「社団名+代表者の肩書+代表者氏名」という方法で記載します。
<契約書の例>
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法人と同一に考える
契約の場面では、権利能力なき社団と法人とを同一に扱うのが判例の解釈や総有説(権利能力なき社団の財産に関する通説的な考え方)の趣旨に沿います。
そして、法人であれば、たとえば契約の名義は、「法人名+代表者の肩書+代表者の氏名」のように記載されるのが一般です。
株式会社であれば、「株式会社A 代表取締役社長、山田花子」などと記載されます。
権利能力なき社団の契約名義や領収証の名義の書き方も、この法人の一般的な記載方法と同一に考えることができます。
たとえば、権利能力なき社団たるマンション管理組合が契約を使用とする場合、「A管理組合 理事長 山田花子」などと記載されます(上記例参照)。
表記方法の意味付け
なお、上記に反して、単に代表者名だけの記載の場合、その記載が団体を指す、と解釈するのはかなり困難です。
通常は、「団体名+代表者の肩書+氏名」の記載をもって、団体としての契約であることを表現します。
そのため、権利能力なき社団を契約主体とする場合、「団体名+代表者の肩書+氏名」との記載をもって、契約当事者が誰かをを示すことになります。
なお、もしそれでも、社団と契約できているのか心配であれば、団体としての契約である旨、その契約書等に明記しておくのも有りです。
印鑑・捺印
印鑑、捺印についても、基本的には法人と同様に考えます。
代表者の氏名の後ろにつける印鑑は、代表印がある場合には代表印を用います。
もっとも権利能力なき社団においては印鑑登録ができない(印鑑証明もない)こともあってか、代表印がないことも多々あります。
この場合、代表者個人の印鑑で代用することもあります。
不動産の売買について
不動産についても契約名義は、上記と同様です。
なお、後述の登記との関係で、不動産売買など登記を要する事項につき、「法人名+代表者の肩書+代表者氏名」で契約書を作成するのは問題があるのではないか、と思われる方もいるかもしれません。
しかし、契約名義についての理屈は上記と同様です。
この点につき、司法書士の先生にも確認してみましたが、やはり「法人名+代表者の肩書+代表者氏名」で構わないとの回答を受けました。
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不動産売買の場面で、契約主体の記載方法は、法人と変わりありません。しかし、登記の場面となると話は別です。判例上、団体名義の登記は否定されています。
銀行口座について
次に、権利能力なき社団の銀行口座について、簡単に確認しておきます。
権利能力なき社団は銀行口座を開設可能です。また、その預貯金額は、ペイオフに際して、構成員個人の払戻金額に影響を与えません。
口座開設の可否
権利能力なき社団には、法人格はありませんが、銀行口座を作成することが可能です。
というより、銀行は、権利能力なき社団に限らず、より広い団体にまで口座の開設を認めています。
ゆうちょ銀行の場合、「団体名」を口座名義人とすることが可能なようです。その他の銀行の場合、「団体名+代表者の肩書+代表者名」が名義人となるのが一般的です。。
ペイオフの場面(権利能力なき社団と単なる任意団体との取り扱いの違い)
次に、金融機関に破綻等が生じた場合、ペイオフ(預金保険機構による払い戻し)によって保護される限度額の算定方法について見ていきます。
預金者が権利能力なき社団なのか、そうではなく、単なる任意の団体にすぎないのか、によってこの算定方法は異なり得ます。
権利能力なき社団の財産の帰属に関し、総有説(団体への帰属)を理解する上での格好の素材です。
預金者が単なる任意団体に過ぎない場合
まず、預金者が単なる任意団体に過ぎない場合についてです。
この場合、ペイオフの場面では、預金額の内、持分相当額が構成員個人の預金と扱われます。
任意団体では個人の持分が観念されるためです。
その結果、ペイオフに際して、団体の預金は各構成員の預金等として、持分に応じて分割された上で、各構成員の他の預金等と合算されます。
この場合、各構成員の預金額は、「個人名義の預金」+「団体預金額×持分」にて算定されます。
預金者が権利能力なき社団の場合
他方で、預金者が権能なき社団である場合、その預金は個人のペイオフ算定に影響しません。
団体の預金については、各構成員が持分を有さず、あくまで権利能力なき社団の預金して扱われます。
そのため、権利能力なき社団の預金額は、ペイオフにおける構成員個人の預金額の算定に影響を及ぼしません。
その結果、構成員個人のペイオフにかかる算定は、個人預金のみで算定されます、そこに社団の財産が加わるという事はありません。
このペイオフの取り扱いは、権利能力なき社団の財産にかかる法的構成をどう捉えるかにも左右されれます。
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訴訟・裁判について
次に権利能力なき社団の訴訟・裁判にかかわる事項を見ていきます。
【権利能力なき社団の当事者能力・当事者適格】
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当事者能力について
権利能力なき社団が民事裁判の当事者となれることについては民事訴訟法が条文を整備しています。
権利の能力なき社団は、法人と同レベルのまとまりを有する団体です。そのため、実体法上、法人と同様に取り扱うべきことが志向されます。
ただ、実体的に同様に取り扱われても、実体上の権利・義務を実現するための訴訟・裁判において、当事者たる能力が認められないのでは、画竜点睛を欠くといわざるをえません。
そこで、民事訴訟法は、権利能力なき社団が、訴訟の当事者となることができるよう条文を整備しています。民訴法29条です。
この規定により、権利能力なき社団は、裁判・訴訟あるいは差し押さえなど、強制執行手続において当事者能力(手続の当事者足り得る能力)を備えていることが明らかにされています。
法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるものは、その名において訴え、又は訴えられることができる。
※ちなみに民法には権利能力なき社団について規定した条文はありません。
当事者適格
また、権利能力なき社団は、事件ごとに、原告となったり、被告となったりします。
管理組合を例に
たとえば、管理組合が管理費を組合員に請求する場面では、原告としての原告適格(請求主体としての適格性)を有します。
また、反対に払いすぎた管理費を返せ、という訴訟では、被告適格(被請求主体としての適格性)を有します。同社団が原告となる場合、訴訟当事者の記載は、やはり「団体名」となります。
これに付加して、代表者(要:資格証明)の「肩書+代表者名」が訴状の当事者の表記の部分に記載されます。
一例として、管理組合による管理費請求訴訟を挙げると、訴状には、「原告 〇〇管理組合」「同代表者理事長 山田花子」などと記載することになります。
登記請求訴訟において
すこし細かい論点かもしれませんが、従前、権利能力なき社団が、登記請求訴訟における原告となれるか、が争われたことがあります。
権利能力なき社団に帰属すべき不動産の登記名義を、同社団の代表者の名義に移転させよう、とする訴訟において、原告適格を有するのは代表者だけなのか、権利能力なき社団も原告適格を有しうるのか、という点が主要な論点です。
ここでは、団体の代表者が、不動産登記の名義人となれないことから、登記を請求する訴訟の当事者にもなれないのではないか、という問題意識が働いています。
しかし、この点につき、最高裁平成26年2月27日判決は、権利能力なき社団が原告となって、登記名義人に対し、登記を団体の代表者名義に移せという内容の訴訟を行うことを容認しています。原告適格を認める旨の判断です。