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権利能力なき社団の登記の可否~最高裁昭和47年6月2日判決~

今回は、各種のテスト対策や実務においても。権利能力なき社団の不動産登記の可否についてです。

権利能力なき社団が不動産の登記名義人となれるのか、という論点は、民法総則では、比較的問われやすい論点です。

また、この論点に対する最高裁の結論は実務にも大きな影響を及ぼしています。

最高裁判決の判旨も含めて確認しておきます。

登記を可とすべき実務上の要請

権利能力なき社団は、法人類似の組織であると評価されます。法人と同様に社会的活動を行う主体であるという理解が一般的です。

そのため、団体が実質的な権利の帰属主体となる場面も多々想定されます。そこで問題となるのが、「登記」です。

~マンション管理組合を例に~

権利能力なき社団が登記を必要とする実益をマンションの管理組合を例に考えてみます。

マンションの管理組合は、もっとも身近な権利能力なき社団の一つです。マンションの住民を構成員とする団体が形成され、その中に、マンション管理のための機関(理事長など)が置かれています。

このマンションの管理組合において、たとえば、マンションの一室(専有部分)の所有権を、会議室・談話室などとして取得する、というケースを想定しましょう。

ローテキスト

ここで関連記事を紹介

次の各記事では、権利能力なき社団の具体例や要件、権利能力なき社団が契約書を作成する場合の名義の記載方法などを解説しています。

ぜひ一度ご参照ください。

権利能力なき社団とは ~具体例と4つの要件~

権利能力なき社団の契約名義、銀行口座、訴訟・裁判の当事者能力

 

登記変更の手間・登記変更しないことのリスク

上記の場合、管理組合が取得した一室につき、管理組合としては、「○○マンション管理組合」とする動機付けが働きます。

理事長の個人名義だと、理事長が変わるたびに(多くの場合1~2年で変わる)、登記上の所有権名義を変更しないといけない。そのために、司法書士費用などのコストも手間もかかります。

また、コストや手間の問題はともかくも、さらに大きな問題があります。

仮に登記を理事長名義にしておくと、変な気を起こした理事長が、自分のところに名義があるのをいいことに、不動産を売却してしまうかもしれません。

管理組合としては、こうした事態・トラブルは絶対にふせぎたい。

そこで、管理組合には、「団体名義」での登記をしたい、という動機付けが働きます。

登記はできない

権利能力なき社団は不動産の登記名義人にはなれません。

その理由の一つとしては、団体の財産が形式的には各構成員に帰属することがあげられます。

不動産登記の制度趣旨との関係

上記のように権利能力なき社団が登記名義人となるべき実務上の要請は強いと言えます。

しかし、権利能力なき社団の財産は、あくまでも、その団体の構成員に「総有」的に帰属しているものです。要は「みんなのもの」ということになります。

法形式的に見て、「単独所有」の場合とは権利の帰属形態が大きく異なることになります。

「権利」を「正確に公示」するための制度である「不動産登記」において、「総有」状態でしかない不動産について、「所有」の登記をしてよいか、がここでは問題視されるのです。。

結論を述べると、現状、権利能力なき社団は、不動産の登記名義人にはなれません。次の最高裁の判決が実務に大きな影響を与えています。

最高裁昭和47年6月2日判決

上記の論点に関する有名な基本判例が最高裁昭和47年6月2日判決です。

<判旨(一部略)>

「権利能力なき社団の資産はその社団の構成員全員に総有的に帰属しているのであつて、社団自身が私法上の権利義務の主体となることはないから、社団の資産たる不動産についても、社団はその権利主体となり得るものではなく、したがつて、登記請求権を有するものではないと解すべきである。」
「不動産登記法が、権利能力なき社団に対してその名において登記申請をする資格を認める規定を設けていないことも、この趣旨において理解できるのである。」
「したがって、権利能力なき社団が不動産登記の申請人となることは許されず、また、かかる社団について前記法条の規定を準用することもできないものといわなければならない。」
「本来、社団構成員の総有に属する不動産は、右構成員全員のために信託的に社団代表者個人の所有とされるものであるから、代表者は、右の趣旨における受託者たるの地位において右不動産につき自己の名義をもつて登記をすることができるものと解すべき」である。
[権利能力なき社団の資産たる不動産については、社団の代表者が、社団の構成員全員の受託者たる地位において、個人の名義で所有権の登記をすることができるにすぎず、社団を権利者とする登記をし、または、社団の代表者である旨の肩書を付した代表者個人名義の登記をすることは許されない」

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団体財産は「構成員」に帰属する

上記判例の根拠は、一言でいえば、「不動産所有権は構成員みなに帰属している」のであり、「団体」に帰属しているわけではない、という点です。

上記判決は、「総有」という表現を用いて、団体は登記名義人にはならない、との結論を導いています。社団自身が私法上の権利義務の主体となることもないと表現しています。

ここでは、団体財産が、構成員みんなに帰属している、という点がクローズアップされます。

この点、本来であれば、「社団と法人とを可能な限り同様に扱う」という判例の立場(反対利益)を貫徹すると、団体名義での登記を認めるのが自然です。

しかし、「権利義務関係の正確性を期す」という不動産登記制度のもとでは、「実質的な権利主体」は「団体だ」という考え方はいったん脇におかれ、その制度目的にウェイトが置かれます。その結果、団体名義の登記は否定されています。

なお、念のため述べておくと、同様の理由から、「団体名+理事長」といった肩書付きの登記も認められていません。

最後に、講学的な整理をしておきます。
団体名義の登記ができるか、という論点を考えるとき、権利能力なき社団の財産の帰属につき、合有説・共有説をとった場合はどうなるのでしょうか。
これは、いずれの説に立つとしても、「団体名義での登記はできない」という結論が導かれます。
合有説、共有説は総有説よりも、構成員個人の権利が色濃く出る考え方です。そのため「団体の所有権」を認める考え方とはかえって離れていきます。