今回は、各種のテスト対策や実務においても。権利能力なき社団の不動産登記の可否についてです。
権利能力なき社団が不動産の登記名義人となれるのか、という論点は、民法総則では、比較的問われやすい論点です。
また、この論点に対する最高裁の結論は実務にも大きな影響を及ぼしています。
最高裁判決の判旨も含めて確認しておきます。
登記を可とすべき実務上の要請
権利能力なき社団は、法人類似の組織であると評価されます。法人と同様に社会的活動を行う主体であるという理解が一般的です。
そのため、団体が実質的な権利の帰属主体となる場面も多々想定されます。そこで問題となるのが、「登記」です。
~マンション管理組合を例に~
権利能力なき社団が登記を必要とする実益をマンションの管理組合を例に考えてみます。
マンションの管理組合は、もっとも身近な権利能力なき社団の一つです。マンションの住民を構成員とする団体が形成され、その中に、マンション管理のための機関(理事長など)が置かれています。
このマンションの管理組合において、たとえば、マンションの一室(専有部分)の所有権を、会議室・談話室などとして取得する、というケースを想定しましょう。
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次の各記事では、権利能力なき社団の具体例や要件、権利能力なき社団が契約書を作成する場合の名義の記載方法などを解説しています。
ぜひ一度ご参照ください。
登記変更の手間・登記変更しないことのリスク
上記の場合、管理組合が取得した一室につき、管理組合としては、「○○マンション管理組合」とする動機付けが働きます。
理事長の個人名義だと、理事長が変わるたびに(多くの場合1~2年で変わる)、登記上の所有権名義を変更しないといけない。そのために、司法書士費用などのコストも手間もかかります。
また、コストや手間の問題はともかくも、さらに大きな問題があります。
仮に登記を理事長名義にしておくと、変な気を起こした理事長が、自分のところに名義があるのをいいことに、不動産を売却してしまうかもしれません。
管理組合としては、こうした事態・トラブルは絶対にふせぎたい。
そこで、管理組合には、「団体名義」での登記をしたい、という動機付けが働きます。
登記はできない
権利能力なき社団は不動産の登記名義人にはなれません。
その理由の一つとしては、団体の財産が形式的には各構成員に帰属することがあげられます。
不動産登記の制度趣旨との関係
上記のように権利能力なき社団が登記名義人となるべき実務上の要請は強いと言えます。
しかし、権利能力なき社団の財産は、あくまでも、その団体の構成員に「総有」的に帰属しているものです。要は「みんなのもの」ということになります。
法形式的に見て、「単独所有」の場合とは権利の帰属形態が大きく異なることになります。
「権利」を「正確に公示」するための制度である「不動産登記」において、「総有」状態でしかない不動産について、「所有」の登記をしてよいか、がここでは問題視されるのです。。
結論を述べると、現状、権利能力なき社団は、不動産の登記名義人にはなれません。次の最高裁の判決が実務に大きな影響を与えています。
最高裁昭和47年6月2日判決
上記の論点に関する有名な基本判例が最高裁昭和47年6月2日判決です。
<判旨(一部略)>
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団体財産は「構成員」に帰属する
上記判例の根拠は、一言でいえば、「不動産所有権は構成員みなに帰属している」のであり、「団体」に帰属しているわけではない、という点です。
上記判決は、「総有」という表現を用いて、団体は登記名義人にはならない、との結論を導いています。社団自身が私法上の権利義務の主体となることもないと表現しています。
ここでは、団体財産が、構成員みんなに帰属している、という点がクローズアップされます。
この点、本来であれば、「社団と法人とを可能な限り同様に扱う」という判例の立場(反対利益)を貫徹すると、団体名義での登記を認めるのが自然です。
しかし、「権利義務関係の正確性を期す」という不動産登記制度のもとでは、「実質的な権利主体」は「団体だ」という考え方はいったん脇におかれ、その制度目的にウェイトが置かれます。その結果、団体名義の登記は否定されています。
なお、念のため述べておくと、同様の理由から、「団体名+理事長」といった肩書付きの登記も認められていません。