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物権と債権の性質の違い。

本日は、民法を学習する上で避けては通れない基本中の基本、「物権」と「債権」の違いについて解説します。

どちらも民法に規定された権利ですが、その性質は対照的です。

そして、その差は、物権が物に対するものであるのに対して、債権が人に対するものである、という根本的な差から生じます。

この差を理解することは、物権・債権、そして契約法理の深い理解につながります。

物権の排他性と債権の平等性

物権には「排他性」があり、一つの物に対して同一内容の権利は一つしか成立しません。対して、債権には排他性がなく、内容が重複する債権も複数同時に有効に成立します。

物権とは、特定の物を直接的に支配する権利です。この支配は強力なため、一つの物の上に、内容が矛盾する二つ以上の物権を同時に認めることはできません。これを「一物一権主義」と呼びます。

例えば、あなたが持っているスマートフォン。

「私がその唯一の所有者だ」という権利(所有権)が成立しているとき、同時に別の人も「いや、私こそがそのスマホの唯一の所有者だ」という所有権を持つことは、物理的にも論理的にもあり得ません。

これに対し、債権は「人に対して特定の行為を請求する権利」に過ぎません。そのため、同じ内容の債権が複数立っても、法的には矛盾しません。

たとえば、不動産業者が、同じ土地をCさんにもDさんにも売る契約を結んだ場合。CさんもDさんも「土地を引き渡せ」という債権を持ちますが、これらは債権としてはいずれも成立します。

両方を不動産会社が履行することは不可能ですが、債権としてはいずれも成立し、そのうちの一つは、債務不履行の問題として処理されることになります。

相矛盾する債権があるからといって、他方の債権の成立を否定する理由にはならないのです。

 絶対的な支配と相対的な請求

物権は「誰に対しても」主張できる絶対的な権利ですが、債権は「特定の債務者にのみ」主張できる相対的な権利です。

物権の「絶対性」とは、権利者が世の中のあらゆる人(不特定多数の第三者)に対して、自分の権利を主張できることを意味します。

一方、債権の「相対性」とは、契約の当事者間(債権者と債務者)だけで効力が発生することを指します。

あなたが駐輪場に自分の自転車を止めているとき、知らない人が勝手に動かそうとしたら「それは私の所有物だから勝手に動かすな」と言えます。

相手が誰であれ、あなたの支配を邪魔する人には「どいてください(妨害排除)」と言えるのが所有権(物権)の強さです。

他方で、債権には通常、このような絶対性はありません。

例えば、Aさんは有名なバイオリン奏者のC先生に、「1ヶ月間、毎週日曜日にマンツーマンで指導してもらう」という約束(契約)をし、代金を支払ったとします。

しかし、ある日、友人Dさんが、C先生が指導を放置して遊び歩いているのを見かけました。このとき、DさんはAさんに対する義務の履行を求めることはできません。DさんはAさんと先生との間に契約関係がないからです。

倫理的にはともかくも、法的にはDさんには何の権利もなく、C先生に指導をもとめられるのは、Aさんに限られます。

 法定主義と契約自由の原則

物権は法律が定めた種類しか作れません(物権法定主義)が、債権は公序良俗に反しない限り、当事者間でどんな内容でも自由に創り出すことができます。
【条文:民法175条(物権の創設)】
「物権は、この法律その他の法律に定めるもののほか、創設することができない。」

物権は、先ほど述べたように「誰に対しても」影響を及ぼす強力な権利です。

そして、「誰にでも」という要素から、一律性・画一性が求められます。物権法定主義です。

もし、個人が勝手に「昨日、私はこの石ころに『触れたら罰金1万円を払わなければならない権』という新しい物権を設定したぞ!」なんて言い出したら、社会がパニックになりますよね。

そこで、法は、物権の種類や内容を法定しているのです。

【条文:民法521条2項(契約の自由)】
「契約の当事者は、法令の制限内において、契約の内容を自由に定めることができる。」

【解説:債権の自由さ】
これに対して債権は、当事者同士が納得していればOKです。「毎日1回、おはようとLINEを送る義務」という債権も、公序良俗に反しなければ有効です。

また、たとえば、SNSのサブスクリプションサービス。毎月一定額を払う代わりに特定のコンテンツが見られるという権利は、民法に名前はありませんが、契約自由の原則によって新しい債権として成立しています。

権利を譲る自由とその制限

物権は物を直接支配する性質上、自由に譲渡できるのが当然とされます。一方、債権も原則譲渡可能ですが、制限がかかることがあります。

【抽象論:譲渡性の根拠】
物権は「物」に対する支配ですから、所有者が変わっても「物」自体には影響がありません。その譲渡は自由に認められます。

他方で、債権も現代では「財産」として流通させることが重視されており、民法466条1項で原則として譲渡ができると定められています。ただ、その譲渡性に制限がかかることがあります。

「他人の土地を使う権利」を例に、物権(地上権)と債権(賃借権)を比較してみましょう。

  • 物権(地上権)
    他人の土地に建物を建てる「地上権」は物権です。
    これは非常に強力なので、地主の許可がなくても勝手に他人に売ることができます。
  • 債権(賃借権):民法612条(賃借権の譲渡及び転貸の制限)
    「賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。」

条文に規定されているとおり、この賃借権には譲渡に制限がかかります。

アパートを借りる際、大家さんは「この人なら家賃をちゃんと払って、綺麗に使ってくれそうだ」という個人的な信頼で貸しています。

それなのに、借り手が勝手に「明日からこの知らない人が住みます」と権利を譲渡できたら、大家さんはたまったものではありません。

このように、債権には「人対人の関係の規律である」という要素から、譲渡性が制限されることがあるのです。

 物権と債権がぶつかったら?

同一の物について物権と債権が競合する場合、原則として物権が優先します(物権の優先的効力)。

「物権は誰に対しても言える強い権利」「債権は契約した相手にしか言えない弱い権利」。この力関係の結果、同じ物について争いになると通常は、物権が優先します。

原則物権が勝つ

たとえば、友人Bから「1ヶ月1万円で借りる約束」をしてバイクに乗っていたA(債権者)に対し、そのバイクをBから買い取ったCさん(物権者)が「私の物だから返せ」と現れた事例を考えます。

この場合、Aは「Bとの約束」を部外者であるCに主張できず、所有権を持つCの主張が認められます。

債権はあくまで契約相手のみに効く権利であり、物権は誰に対しても主張できる強い支配権であるため、両者が衝突すると物権が優先されるのです。

AはバイクをCに渡し、Bに対して契約違反の責任を追及する形になります。

原則が妥当しない場合

もっとも上記原則が妥当しない場合もあります。

あなたがAさんから部屋を借りて住んでいる(賃借権=債権)とします。ところが、Aさんがその建物をBさんに売却し、Bさんが新しい所有者(所有権=物権)になりました。

このとき、原則論に立つと、Bさんはあなたに対して「私は新しい所有者だ。あなたと契約した覚えはないから、今すぐ出ていけ!」と言えてしまいます。

これが「売買は賃貸借を破る」という有名な格言の正体です。

しかし、これでは借りている人があまりに可哀想です。

そこで、法律は、不動産について登記(民法605条)ないし建物の引き渡し(借地借家法)を整備し、賃借人が新たな所有者にも権利を主張できる仕組みを整えています。

この場合、借り手は、当該不動産を明け渡す必要はありません。これを債権の物権化ということもあります。

整理

以上を整理すると次のようになります。

比較項目 物権(物に対する権利) 債権(人に対する権利)
本質 物を直接的に支配する 特定の人に行為を請求する
排他性 あり(1つの物に1つのみ成立) なし(二重契約も有効に成立)
主張の範囲 絶対的(誰に対しても言える) 相対的(契約相手にしか言えない)
創設の自由 法律で決まったもののみ(法定主義) 公序良俗に反さねば自由
譲渡性 原則自由 原則可能だが、制限される場合あり

 

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