今回は、任意代理の権限の範囲について見ていきます。
資格試験のテキストなどで、代理権の発生原因として、「権限の授与」といった言葉が使われますが、「権限の範囲」に踏み込むことは少なく、正直イメージがわきにくいのではないでしょうか。
今回は、この「権限の範囲」について具体化してみます。
権限の範囲は無権代理であるか否かを左右する
本人が第三者に権限を付与する行為を、代理権授与行為といいます。
この授与行為がなければ、Bさんが顕名をしつつ、Aさんを代理して行った法律行為は「無権代理行為」となります。
また、もう一つ無権代理行為と評価される例として、Aさんが代理権を与えたが、Bさんがその「権限の範囲」を越えて、法律行為を行った場合があげられます。
したがって、顕名の上で行われた行為が無権代理行為になるか否かは、上記の「権限の有無」及び「権限の範囲」によって左右されることとなります。
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また、いわゆる表見代理については、上記関連ページをご参照ください。基本概念のほか、権利外観法理を背景に、関連規定につき、帰責性と相手方保護の主観的要件を整理しています。
代理権の範囲は本人の意思によって画される
任意代理において、権限の範囲は、権限の授与に際して、いかなる権限が与えられたかにより左右されます。権限の範囲が、本人の意思によって画されるというわけです。
この範囲の確定は、有効に本人に法律効果が帰属するのかの判断の際に必要になるとともに、表見代理の規定(民法110条)を適用する前提としても極めて重要な作業となります。
契約で委任の範囲を定める例
たとえば、Aさんが、弁護士Bに東京の「甲建物」の売買契約(相手方C)の交渉・契約締結にかかる代理権を与える場合を想定します。
この場合、AさんとB弁護士との間では、建物売買に関する委任契約書や委任状が作られます。
その契約書や委任状には、たとえば、委任事項として、「C社に対する甲建物の売却交渉及び契約の締結」などと記載されます。これらの書類(AさんとB弁護士の合意を文書化したもの)でB弁護士の権限の範囲が画されているわけです。
また、こうした委任契約の締結に際しては、法律行為に加え、「売買代金の受領」やこれに関する「関連資料の交付」など、事実行為に至るまで、受任者の権限の範囲を広げることも可能です。
ここでは、B弁護士の権限の範囲は、委任契約にかかる合意により設計されていることになります。
この合意によって与えられた権限の範囲が、B弁護士が行った契約が「権限の範囲内」なのか、はたまた「無権代理(範囲外)」なのかを左右します。
権限の定めがない場合
民法は、「任意代理人の権限の範囲は本人と受任者との間の合意で決まる」という立て付けですので、「代理権の範囲」について定めた規定は少ないです。
ただ、民法103条に一応の規定が置かれてます。それは、本人と受任者との間で、「権限の定めがない場合」の規定です。
「当事者間に権限の定めがない」という場合というのは、たとえば、「あの不動産よろしく頼むな」というようなレベルで代理権授与(内容不明瞭な委任行為)が行われたケースなどが考えられます。
こうした場合に代理人が全く権限を有しないかというと、そういうわけではありません。
民法103条によれば、代理人は、その権限が定められていなくても、保存行為や、代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為を本人に代わって行うことが可能です。
※なお、本稿は任意代理を念頭に置いていますが、民法103条は、法定代理の場合(保佐人・補助人)にも適用の余地があると理解されています。
権限の定めのない代理人は、次に掲げる行為のみをする権限を有する。
一 保存行為
二 代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為
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権限を証する書類
任意代理権を証する書類としては、本人が交付した委任状などがあげられます。
委任状として、ちょっとイメージしやすいようにサンプルを作成してみました。

この委任状においては、委任者が受任者に対して、不動産売却の契約締結などを委任し、そのための代理権を受任者に授与しています。
また、委任の範囲欄に、次の権限が記載されています。
【不動産の売却にかかる次の事項】
- 相手方の選定
- 契約交渉、契約締結
- 売却代金の受領
- その他、上記に付随する一切の行為
この委任状に基づくと、受任者は、自分で不動産の売却相手を見つけて、交渉し、有効に代理人として、売買契約を締結することが可能です。
それは、「相手方の選定」が委任の範囲に含まれているからです。
他方で、かかる代理権において、受任者が不動産の賃貸を行ったら、それは無権代理行為と評価されます。
受任者には「賃貸の権限」が与えられていないからです。
このように、受任者の行為が無権代理行為になるか否かは、本人と受任者との間の「委任事項が何か」≒「権限の範囲はどこからどこまでか」に即して判断していくこととなります。
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有効に代理権を行使するためには、「権限の範囲内の行為である」という他にも、充足しなければならない要件があります。次の記事をご参照いただけますと幸いです。