民法5条1項
民法5条1項
未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。
- 4コマ解説

【解説】
この条文には、大きく分けて「原則」と「例外」の2つが書かれています。
【原則】親の同意が必要
未成年者(18歳未満)が、スマホの契約をしたり、高い買い物をしたりする(法律行為)ときは、親(法定代理人)に「いいよ」と言ってもらわなければなりません。
【例外】自分に「得」しかないなら、一人でOK
ただし、未成年者にとって「プラスにしかならないこと」や「負担が消えるだけのこと」であれば、親の同意がなくても自分一人で決めていいですよ、としています。
なぜ「同意」が必要なのか?(原則の理由)
世の中には、知識や経験が豊富な大人がたくさんいます。もし18歳未満の人が、巧妙なセールストークに乗せられて、自分に不利な契約を結んでしまったら大変です。
そのため、民法は「未成年者はまだ判断力が不十分な可能性があるから、親がフィルター(ガードレール)になって守ってあげなさい」という仕組みを作ったのです。
「単に権利を得、又は義務を免れる」とは?(例外の具体例)
条文の後半にある「この限りでない(=親の同意はいらない)」というケースを、具体的に見てみましょう。
- 単に権利を得る: 例えば、おじいちゃんから「この家をタダであげるよ(負担のない贈与)」と言われた場合。もらう側にはメリットしかないので、親の許可なく「ありがとう!」と受け取ることができます。
- 義務を免れる: 例えば、友人から1,000円借りていたけれど、友人が「その1,000円、もう返さなくていいよ(債務の免除)」と言ってくれた場合。借金が消えるだけなので、これも一人で承諾できます。
民法5条2項
民法5条2項
前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。
- 4コマ解説

【解説】
一言でいうと、「親に内緒で勝手に結んだ契約は、後からなかったことにできる」というルールです。
- 前項の規定に反する:
未成年者が、親の同意を得ずに契約などの法律行為をすること。 - 取り消すことができる:
「やっぱりこの契約はやめます」と言えば、契約の効力を消し去ることができるという意味です。
「取り消す」とどうなる?
この「取り消し」には、非常に強力な効果があります。
- 最初からなかったことになる:
取り消した瞬間、その契約は「最初から一度も存在しなかった」ことになります。 - 元通りにする義務:
代金を払っていれば返してもらえますし、商品を受け取っていれば返さなければなりません。 - 未成年者の特権(現存利益の返還):
普通の取り消しと違い、未成年者の場合は「今手元に残っている分だけ返せばいい」という特別なルール(民法121条の2)でさらに守られています。
例えば、遊興費で使い切ってしまったお金までは返さなくてよいケースがあります。
3. なぜ「無効」ではなく「取り消し」なのか?
第3条の2(意思能力)では「無効(最初からゼロ)」でしたが、第5条では「取り消せる(後からゼロにできる)」となっています。この違いには理由があります。
- 未成年者のためになるなら、そのままにできる:
もし未成年者が親に内緒で買ったものが、実はすごくお買い得で、本人も親も「これはいい買い物だ」と納得したなら、あえて取り消さずに有効なままにしておくという選択肢を残しているのです。 - 「追認」:
親が後から「その契約、認めるよ」と言えば、その契約は完全に有効になり、もう取り消せなくなります。
このルールの「副作用」
このルールがあるおかげで、未成年者は守られますが、逆にビジネスの相手側はリスクを抱えることになります。
「後で取り消されるかもしれない」と怖がって、大人が未成年者と取引してくれなくなるかもしれません。そのため、実社会では以下のような対策が取られています。
- 高額な商品(車やローン)の契約では、必ず親への電話確認や同意書の提出を求められる。
- 年齢を偽って(詐術を用いて)相手を信じ込ませた場合は、取り消せなくなるルールがある(民法21条)。
まとめ
第5条第2項は、未成年者にとっての「最強の盾」です。 「よく分からないまま契約してしまった」という失敗を、法的にリセットできるチャンスを与えてくれているのです。
民法5条3項
民法5条3項
第一項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、同様とする。
- 4コマ解説

【解説】
「親から『これに使っていいよ』、あるいは『自由に使っていいよ』と渡されたお金なら、子供が自分の判断だけで使ってもいい」というルールです。
- 目的を定めて処分を許した:
「学用品を買いなさい」「お昼ご飯代だよ」と使い道を決めて渡されたお金。 - 目的を定めないで処分を許した:
いわゆる「自由に使っていいお小遣い」のこと。 - 自由に処分することができる:
親の同意(サイン)がいらないという意味です。
なぜこのルールが必要なのか?
もしこの第3項がないと、生活がとても不便になってしまいます。
想像してみてください。中学生がコンビニで100円のグミを買うたびに、レジの横で親が「同意します」とサインをしなければならないとしたら……。お店の人も、親も、本人もたまったものではありませんよね。
この条文があるおかげで、「少額の買い物や、親が認めた範囲の支出」については、いちいち法律の堅苦しいルールを持ち出さなくてもスムーズに買い物ができるようになっています。
「自由」に使える範囲はどこまで?
ここで気になるのが、「いくらまでなら自由なの?」という点です。
実は、条文には具体的な金額(例:5,000円まで)は書かれていません。「その家庭の生活水準」や「社会通念(世間一般の常識)」で判断されます。
- OKになりやすい例:
お小遣いでマンガを買う、友達と映画に行く、親から預かったお金でノートを買う。 - 取り消される可能性がある例:
「お小遣い」として渡された金額を明らかに超えるような、数十万円のブランド品や、親が到底想定していないような特殊な契約。
ひとり暮らしの学生さんは?
「目的を定めて処分を許した財産」の典型例は、仕送りです。
親が「家賃と食費、教科書代に使いなさい」と送ってくれたお金であれば、その範囲内で行う契約(教科書の購入など)は、未成年者であっても一人で有効に行うことができます。
まとめ
第5条は、全体で以下のような3段構えになっています。
- 【原則】 未成年者の契約には親の同意が必要(第1項)
- 【守り】 勝手にやった契約はキャンセルできる(第2項)
- 【現実】 でも、お小遣いや渡されたお金の範囲なら自由(第3項)
この第3項があることで、未成年者は少しずつ「お金を使い、社会で買い物をする」という経験を積んでいくことができるのです。