民法23条1項
民法23条1項 住所が知れない場合には、居所を住所とみなす。
- 4コマ解説

【解説】
この条文は、一言でいうと「どこに住んでいるか(住所が)どうしても分からない人の場合は、とりあえず今その人が寝泊まりしている場所(居所)を、法律上の住所として扱います!」というルールです。
日常生活では「住所」も「居所(きょしょ)」も似たような意味で使いますが、法律の世界では明確に使い分けられており、この条文はその隙間を埋める重要な役割を持っています。
「住所」と「居所」の違いって?
まずは、この2つの言葉の法律上の違いを押さえると、条文がスッと頭に入ってきます。
- 住所(じゅうしょ): 民法22条で出てきた「生活の本拠」のことです。家族がいて、仕事があって、現実にその人が一番深く根を張って暮らしているメインベースです。
- 居所(きょしょ): そこまで深い根っこはないけれど、「現にその人が継続して滞在している場所」を指します。
- 例:短期の出張で数ヶ月だけ泊まっているウィークリーマンション、数週間入院している病院、ホテル暮らしの宿など。
なぜこのルールが必要なの?
もし、この世からふらりと失踪してしまったり、住民票を抜いて各地のホテルを転々としたりして「生活の本拠(住所)がどこか分からない人」がいたらどうなるでしょうか。
その人にお金を貸している人(債権者)が「裁判を起こして返してもらおう!」と思っても、どこを相手の住所として書類を送ればいいのか分からず、手続きがストップしてしまいます。
そこで23条1項の出番です。 「メインベース(住所)が不明なら、いま現に寝泊まりしているその場所(居所)を住所と『みなす』。だから、そこに裁判の書類を送るし、そこを基準に手続きを進めるよ!」と決めることで、周りの人が大迷惑を被るのを防いでいるのです。
💡 強力な言葉「みなす」
法律で「みなす」という言葉が使われるときは、「事実がどうであれ、法律上は100%そういうものとして強制的に扱う」という意味になります。
たとえ本人が「ここはただの一時しのぎのホテルだ!俺の本当の住所(生活の本拠)じゃない!」と反論したとしても、住所が不明である以上、法律上はそのホテルが文句なしに彼の「住所」として扱われることになります。
まとめ
💡 民法23条1項の本質 「住所が分からないから手続きできません」という言い訳を通さないためのルールです。**「住所が迷子なら、今いる場所(居所)を強制的に住所に変身させる」**ことで、社会の取引や法律手続きがストップするのを防いでいます。
民法23条2項
民法23条2項 日本に住所を有しない者は、その者が日本人又は外国人のいずれであるかを問わず、日本における居所をその者の住所とみなす。ただし、準拠法を定める法律に従いその者の住所地法によるべき場合は、この限りでない。
- 4コマ解説

【解説】
民法23条2項は、一言でいうと「海外暮らしなどで日本に『住所』がない人の場合、日本人か外国人かを問わず、日本国内で今寝泊まりしている場所(居所)を、日本の法律上の『住所』として扱います!」というルールです。
1項の「住所が分からない人」に続き、今回は「日本にベースがない人」がターゲットです。後半の難しい「ただし書き」も含めて、分かりやすくほぐして解説しますね。
1. なぜこのルールがあるの?(前半部分)
グローバル化した現代では、以下のような人がたくさんいます。
- 長年海外で暮らしていて、日本には実家も家もない日本人(海外転出組)
- ビジネスや観光で日本に中長期滞在している外国人
こうした人たちが日本国内で「車を買う」「部屋を借りる」「買い物のトラブルで裁判になる」といった法律行為をするとき、日本に「生活の本拠(住所)」がありません。これでは、どこの裁判所や役所が担当すればいいのか迷ってしまいます。
そこでこの条文の前半は、「国籍に関係なく、日本に住所がないなら、今日本で滞在しているホテルやマンスリーマンション(居所)を、日本の法律上の住所ってことにしちゃおう!」と決めているのです。
2. 「ただし書き」の難しい部分はなに?
後半にある、以下のややこしい一文。
「ただし、準拠法を定める法律に従いその者の住所地法によるべき場合は、この限りでない。」
これは国際的な法律のジャンル(国際私法)の話で、「もし、その人の『本物の住所がある国の法律』を使わなきゃいけないルールのときは、この居所を住所とみなすワザは使えませんよ」というブレーキの役割を持っています。
ちょっと具体例で見てみましょう。
例:アメリカ(ニューヨーク)にずっと住んでいるアメリカ人が、観光で日本のホテルに滞在しているケース
この人が「遺言」を書いたり「結婚・離婚」をしたりするような、人生の根本に関わる重大な法律問題が起きたとします。
日本のルール(法の適用に関する通則法など)では、「こういう個人の根本的な問題は、その人が本当に暮らしている国の法律(今回の場合はニューヨーク州法)に従いましょう」と決まっています。
この時にまで23条2項を無理やり当てはめて、「今日本のホテルにいるから、日本の法律を適用ね!」としてしまうと、本人の人生がめちゃくちゃになってしまいますよね。
だから、**「その人の本拠地の法律(住所地法)を使うべき大事な場面では、無理に日本の居所を住所とはみなしません。ちゃんと海外の本拠地ベースで考えます」**というのが、このただし書きの優しさです。