民事訴訟と強制執行・民事保全手続との関係性

民事訴訟は、私人対私人との間における権利義務・法律関係の紛争を解決するための手続ですが、これに関係の深い手続きとして、強制執行と民事保全という手続があります。

いずれも、民事訴訟に付随する手続に位置付けられます。

以下、強制執行手続と民事保全手続が民事訴訟との関係で、どのように位置づけられるのか、その関連性を見ておきます

民事訴訟と強制執行手続(民事執行手続)との関係

強制執行手続というのは、民事訴訟・裁判等で認められた権利を実現するための手続です。

たとえば、AさんがBさんに対して、100万円の権利を有している、と裁判所が民事裁判で判断(判決)した場合を考えてみましょう。

この場合において、Bさんが、「所が言うんだからしょうがない、100万円をAさんに払おう、」任意に支払ってくれれば、Aさんの権利は実現されます。

しかし、世の中、裁判所が判断したからと言って、気持ちよく払おう、という人ばかりではありません。裁判所の判断が結局無視・放置される、といったケースは往々にして存在します。

このように、裁判で認められた権利につき、義務者が任意に履行しない場合、権利を実現するには、強制力に頼るほかありません。

その強制力行使としての手続が強制執行手続ということになります。

なお、民事に関する強制執行の手続は、民事執行法という法律に定められています。

たとえば、預金や給与の差押え、不動産の差押え・強制競売といったものが、強制執行の一例です。

民事訴訟と民事保全手続との関係

民事保全手続というのは、権利を保全するための手続きです。

AさんがBさんに対して、100万円の権利を有している、と裁判所が民事裁判で判断(判決)した場合を再度考えてみましょう。

Aさんは、Bさんがある銀行の支店に預金を有している、という情報を裁判前に把握していたとします。

ところが、Bさんは、裁判に負けそうなことが分かると、銀行の預金を引き出して、これをどこかに隠してしまいました。

この場合、AさんがBさんの預金を差し押さえようとしても、もう銀行に預金はありませんから、事前の情報でつかんでいた預金を差押えることはできません。

しかし、これでは、財産を隠したBさんの逃げ得となってしまいます。

このような事態を避けるために利用されるのが、民事保全手続です。

裁判前などにおいて、事前に、Bさんの預金を仮に差し押さえるなどした場合、Bさんが預金を引き出したり、処分したりすることを封じることができます。

その上で、Aさんが民事訴訟で勝訴すれば、Aさんは事前に仮差押えを掛けていた上記の預金口座に満を持して強制執行を掛けることが可能となるわけです。

このように、民事保全の手続は、権利者の権利を保全するため利用されます。

代表的な手続としては、不動産禁止の仮処分や預金の仮差押えなどが挙げられます。