今回のテーマは、「民事訴訟の紛争解決手段としての位置づけ・特徴」についてです。
以下、紛争解決手段として、他の手段・手続との関係で、民事訴訟がどのように位置づけられるのか、その位置づけと特徴について見ていきます。
民事訴訟の位置づけ
私人と私人との間で紛争・もめ事が生じた場合、その解決手段は一つではありません。
私人間で紛争が発生した場合でも、当事者間で任意の話し合いを行って解決することは多々あります。
交通事故の示談などがその例です。
また、日本では、一定の公的機関が私人間の紛争の調整を行う「仲裁」という手続や裁判所関与のもとで、話し合いにより紛争を解決することを志向する「調停」といった手続もあります。
民事裁判は、このような数ある紛争解決のための手段・手続一つに位置付けられます。
民事裁判の特徴
他の解決手段と比較した場合の民事裁判の特徴をあげると次のようになります。
① 権利義務に関する争いを解決するものであること
まず、民事裁判は、私人間の権利義務に関する争いを解決するためのものです。権利義務関係の存否に関係のないもめ事の解決は民事裁判には馴染みません。
たとえば、ある高校の野球部で、誰がエースなのか部員間でもめたとしても、それは権利義務関係の存否には関係がないので、その解決を民事裁判に求めることはできません(変な例ですが、権利義務関係の存否以外の例を思いついたので書いておきます。)
② 紛争解決は実体法によって図られる
また、①とも関連しますが、民事裁判における解決は、民法などの実体法に基づいて判断されることになります。
調停は、相対する当事者間の意思・意向に照らして解決が図られることになるのに対し、民事裁判は、実体法に照らして解決を図る手続です。
実体法が紛争の解決基準となるため、当事者の言い分が法律上、認められるものなのか否かが主として審理の対象となります。
③ 強制的解決手段であること
また、民事裁判は、権利義務に関する争いにつき、裁判所が公権力の行使として、解決をはかるものです。
調停は、当事者が出頭して合意をしないと成立しない手続であるのに対し、裁判の場合、
訴えられた被告に裁判を受ける意思がない場合でも、あるいは被告が実際に訴訟追行をしない場合でも、裁判所は、判決を出すことができます。
裁判所が、相手方当事者の意思にかかわりなく、強制的に判決をすることができるわけです。
当事者が話し合いに応じず、調停にも来ない、といった場合でも、民事裁判を利用すれば、私人間の権利義務に関する紛争につき、一定の解決が図られる、ということになります。