夫婦の別居に際して、連れ去りが横行している、それにもかかわらず、その防止のための立法措置がなされていない、その結果、精神的苦痛を被ったとして、令和2年2月26日、子どもと離れて暮らす親14人が国を相手取って集団提訴したようです。
連れ去ったほうが有利!?
連れ去りがなぜ横行するのか、それは、連れ去った親側に、「自分が子供を見ていきたい」あるいは「相手には任せられない」という考えがある。
ただ、そのほかにも、連れ去ったほうが親権者争い・監護権者争いで有利になりえるから、という事情が一因になりうる。
親権や監護権争いの場面では、子供を継続的に監護しているという事情は、親権を取得する有利な事情の一つになります。
誤解を招く表現なのかもしれませんが「連れ去った親」がその子供をきちんと育てることができているという場合、その事情が、監護権・親権争いに有利に働くことがあるのです。
連れ去ったほうの親は、「自分は一人で子供を育てられる」、「子供は安心して暮らせてるよ」と実績を引っ提げて、裁判などの手続に臨めるのに、他方の親はそれができない、その結果、連れ去った親のほうが有利になる。
他方で、子供を連れていくときに、他方の親の同意があったかなかったか、という点は現状、それほど、監護権・親権争いにつきウェイトを占めるものではありません。
そうだとすると、連れ去り防止の立法化の重要性も分かりますが、子供を「同意なく」連れて行った、という別居時の事情は、もう少し、監護権・親権争いに関して、監護権者・親権者としての適格性に疑義を挟む事情として、もう少し斟酌されなければならないではないか。
それが、間接的には「同意」あるいは「最低限度の話し合い」すらない子供の連れ去りを防止することにつながるような気がします。
請求額は11万円
ちなみに、この報道で、一人当たりの損害賠償請求額は11万円とされています。なんとも中途半端に思うかもしれませんが、こういう請求は結構あります。
実は、裁判で不法行為責任などを問うとき、裁判所は、弁護士費用分として、損害額の10%分を実損害に上乗せしてくれることがあります。
上記裁判における11万円という請求もおそらくはこれに由来します。10万円の慰謝料に1万円の弁護士費用を上乗せして請求している、たぶんそういうことです、たぶん。