道交法改正!「あおり運転の厳罰化」 近接停止事故はさらに厳罰処分

2020年6月、道交法が改正され、あおり運転の厳罰化が図られました。

あおり運転をどのように定義して罰則化したのかと思いきや、「通行妨害目的」+各道交法違反を補足して厳罰化したものでした。

条文を見ておきましょう。

改正法による規制の対象(あおり運転の意味合い)

法改正は、形式的には、117条の2の2を追加する方法で行われました。11号が新たに加わります。

大雑把に言えば、通行妨害目的で、道交法の規定違反をすると、あおり運転として厳罰処分するよ、という規定です。対象となる道交法違反は次のようなものです。

【他の車両などの通行を妨害する目的】
上記条文中、厳罰の根拠となるのは、「他の車両等の通行を妨害する目的で」の部分です。

「安全運転義務」違反も規制対象となっていますから、運用面で実質的に中身のある要件は、「他の車両等の通行を妨害する目的で」だけと言えるかもしれません。

当然、この規定の適用を巡っては、他の車両の通行を妨害する目的をドライバーが有していたか否かがしばしば争点になることが予想されます。

妨害目的なんかなかった、と弁明するドライバーは少なくないでしょうから、どういう事実があればここが認定されるのかが法律論としてはポイントになりそうです。

【法改正の内容】
第百十七条の二の二中第十一号を第十二号とし、第十号の次に次の一号を加える。
十一 他の車両等の通行を妨害する目的で、次のいずれかに掲げる行為であつて、当該他の車両等に道路における交通の危険を生じさせるおそれのある方法によるものをした者
イ 第十七条(通行区分)第四項の規定の違反となるような行為
ロ 第二十四条(急ブレーキの禁止)の規定に違反する行為
ハ 第二十六条(車間距離の保持)の規定の違反となるような行為
ニ 第二十六条の二(進路の変更の禁止)第二項の規定の違反となるような行為
ホ 第二十八条(追越しの方法)第一項又は第四項の規定の違反となるような行為
ヘ 第五十二条(車両等の灯火)第二項の規定に違反する行為
ト 第五十四条(警音器の使用等)第二項の規定に違反する行為
チ 第七十条(安全運転の義務)の規定に違反する行為
リ 第七十五条の四(最低速度)の規定の違反となるような行為
ヌ 第七十五条の八(停車及び駐車の禁止)第一項の規定の違反となるような行為

道交法117条の2(三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金)

上記条項が加わるのは、道交法117条の2です。

道路交通法第百十七条の二の二(本文)
次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

上記近接停止などの規制対象行為については、この117条の2が適用されます。

そのため、法改正後、上記の改正法の要件に満たすあおり運転を行った者は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金の処せられる可能性があります。

【近接停止などで死傷事故を起こすとさらに重い】
また、現在、国会で、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律の改正が審議されています。

同法案では、次の二つの行為によって人を負傷させたものは、十五年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は一年以上の有期懲役に処す、とされています。

近接停止などで死傷事故を起こした場合の処分を厳罰化するものです。

 

<追加される犯罪行為>
自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法改正で、次の行為が処罰対象として追加されます。

五 車の通行を妨害する目的で、走行中の車(重大な交通の危険が生じることとなる速度で走行中のものに限る。)の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転する行為

六 高速自動車国道(高速自動車国道法(昭和三十二年法律第七十九号)第四条第一項に規定する道路をいう。)又は自動車専用道路(道路法(昭和二十七年法律第百八十号)第四十八条の四に規定する自動車専用道路をいう。)において、自動車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転することにより、走行中の自動車に停止又は徐行(自動車が直ちに停止することができるような速度で進行することをいう。)をさせる行為

まとめ

ニュースなんかで見るあおり運転事故、悲惨ですし、許しがたいところがあります。

今回、道交法はあおり運転と評価しうる行為を広く処罰の対象としました。また、その中でも特に危険度の高い近接停止により、死傷事故が起きた場合、さらに重たい処分が課され得ます。

さらにハード面、ソフト面、整備しなければならないところはあると思いますが、あおり運転撲滅に向けて一歩進んだと評価してよいのではないでしょうか。