憲法に反する?香川県ゲーム条例の何が問題か、内容をちゃんと知っておこう。

先般、香川県内の高校生とその保護者である母親が、香川県ネット・ゲーム依存症対策条例が違憲であるとし提訴し、話題となっています。

「条例が違憲である」との結論に達するのか、私は否定的です。

ただ、この訴訟提起は、個人の自由ってなんだ?国や自治体の役割って何だと考えさせられる問題提起を含みます。

どんな内容の条例なのか、整理しておきます。

同条例の条文については議案をご参照ください。

ゲーム条例の目的

香川県のゲーム条例の目的は、「子供の健やかな成長と健全な社会の実現」とされています。

同条例1条
この条例は、ネット・ゲーム依存症対策の推進について、基本理念を定め、及び県、学校等、保護者等の責務等を明らかにするとともに、ネット・ゲーム依存症対策に関する施策の基本となる事項を定めることにより、ネット・ゲーム依存症対策を総合的かつ計画的に推進し、もって次代を担う子どもたちの健やかな成長と、県民が健全に暮らせる社会の実現に寄与することを目的とする。
【1条規定の趣旨・目的】
条例の1条自体、もろもろ書かれてて読みにくいですね。

大雑把に言えば、上記目的を実現するため、この条例は、上記のネット・ゲーム依存症対策として、県や学校保護者の責務や諸々の施策の基本事項を定めます、と書かれています。

ゲームだけでなくインターネットも条例の対象

上記第1条を読む上でのポイントは、「ネット・ゲーム」と記載されている点。特に真ん中の「・」がポイントです。

【規制の対象】
この香川県の条例が対象とするのは「ネットゲーム」ではありません。

「ネット」と「ゲーム」です。「ゲーム」だけでなく「ネット」依存症対策も立法目的に含まれています。

この条例中には、第2条において、「ネット・ゲーム」を定義する規定があるのですが、ここでは「ネット・ゲーム」は「インターネット及びコンピューターゲーム」と定義されています。

同条例2条1号・2号
この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(1) ネット・ゲーム依存症 ネット・ゲームにのめり込むことにより、日常生活又は社会生活に支障が生じている状態をいう。
(2) ネット・ゲーム インターネット及びコンピュータゲームをいう。

このゲーム条例が問題だと指摘されている部分

この条例中、もっとも問題だと指摘されていることの一つは、公権力が家庭に入り込みすぎているのではないか、という点です。

保護者は、第一義的責任者

まず、保護者が第一義的責任者とされています。

同条例第6条
1 保護者は、子どもをネット・ゲーム依存症から守る第一義的責任を有することを自覚しなければならない。
2 保護者は、乳幼児期から、子どもと向き合う時間を大切にし、子どもの安心感を守り、安定した愛着を育むとともに、学校等と連携して、子どもがネット・ゲーム依存症にならないよう努めなければならない。
3 省略

【保護者の位置づけ】
この条例は、保護者を、子供をネット・ゲーム依存症から守るための第一義的責任者と位置付けています(第6条)。

子供がネット・ゲーム依存症にしないために、あなたが一番大事な責任者なんですよ、と規定した条例です。ただ、詳論は避けますが、「第一義的責任」という用語を使う適切性についても、当然議論は生じえます。

子どもがネット・依存症になったら、第一義的責任者である「親の責任である」こういう帰結を導いて、子供がネット・ゲーム依存症であることに悩む保護者をさらに苦しめかねません。

また、序列が付く結果として国・自治体側の責任もあいまいになります。

家庭におけるルール作り

この条例は上記の通り、保護者を第一義的責任者としたうえで、次の二つの内容を盛り込んだルール作りをすることを求めています。

①スマホなどを使ったゲームの利用時間を、平日は60分、休日は90分を上限とすること
②幼児から中学生までの間はスマホなどを使えるのは夜9時まで、高校生は夜10時までを目安とすること

ただし、②夜9時ないし夜10時以降も、「家族との連絡及び学習に必要な検索等」については、スマホなどを使ってよいとされています。

同条例第18条
1 保護者は、子どもにスマートフォン等を使用させるに当たっては、子どもの年齢、各家庭の実情等を考慮の上、その使用に伴う危険性及び過度の使用による弊害等について、子どもと話し合い、使用に関するルールづくり及びその見直しを行うものとする。

2 保護者は、前項の場合においては、子どもが睡眠時間を確保し、規則正しい生活習慣を身に付けられるよう、子どものネット・ゲーム依存症につながるようなコンピュータゲームの利用に当たっては、1日当たりの利用時間が60分まで(学校等の休業日にあっては、90分まで)の時間を上限とすること及びスマートフォン等の使用(家族との連絡及び学習に必要な検索等を除く。)に当たっては、義務教育修了前の子どもについては午後9時までに、それ以外の子どもについては午後10時までに使用をやめることを目安とするとともに、前項のルールを遵守させるよう努めなければならない。

3 保護者は、子どもがネット・ゲーム依存症に陥る危険性があると感じた場合には、速やかに、学校等又はネット・ゲーム依存症対策に関連する業務に従事する者等に相談し、子どもがネット・ゲーム依存症にならないよう努めなければならない。

【上限時間などを定めるルール】
上記18条は、この条例のなかで最も特徴的で話題を集めた規定です。依存症防止のため「1日単位の時間規制」をルールとすることを要求しています。

しかし、当然、家庭に法が入りすぎだという批判は妥当します。

また、時間規制にどこまで効果があるのか疑問視する声もあります。ゲームは60分、動画やSNSはそれを超えてもOKよ、学習のための検索なら9時以降もいいよ、という価値判断を行政がやること自体疑問です

私が子供のころ、一つのロールプレイングゲームをクリアするのに30時間~50時間ぐらいを費やしていました。

宿題もちゃんとやってご飯も食べて明日の準備もちゃんとして、そういった日に2時間ゲームをしていても全く怒られませんでした。

家に帰ってきて、宿題もすぐに終わらした、それ以外に家の手伝いもした、他にもやるべきことをやった、夜10時までに寝るなら後は自由にしていいよ、そういったルールで良い、そういった家庭だってあるはずです。

ゲームは1日60分と限る家庭がよいのか、他のルールがよいのか、それは家庭ごとの価値判断にゆだねられるべき事柄です。

公権力が時間制限を家庭のルールとするよう求める、しかもそれがどこまで効果があるのか分からない、でも保護者を第一義的な責任者に位置付ける・・、考えてみると気分のいいものでありません。