女性の裁判官比率が増加している件

最近、新聞を見ていて、女性の裁判官の割合・比率に関する情報に接しました。

女性の裁判官は継続的に増加傾向にある、というニュースです。

実際、ここ15年で、どの程度、女性裁判官の割合が増えているのか、調べてみました。

平成15年から平成29年までの女性裁判官の割合

調べたのは、平成15年から平成30年の女性裁判官の割合です。ソースは、男女共同参画局の令和元年度 女性の政策・方針決定参画状況調べ(d司法)です。以下、「調べ」のことを単に「令和元年度調査結果」といいます」。

裁判官全体における女性割合の推移

令和元年度調査結果によると、平成15年以後、平成30年まで女性裁判官の割合・比率は一貫して増加傾向にあります。同調査結果を基にした次の表及びグラフをご参照ください。

年を追うごとに、少しずつ、女性裁判官の割合が増加していることが分かると思います。
<女性裁判官の割合>

(注)上記は、平成25年まで4月を基準月とし、平成26年以降については12月を基準月とするデータである点に注意してください(令和元年度調査結果によると、平成26年12月以降、基準月と計上方法が変更されています。以下で示すデータについても同様です。)。

判事・判事補ごとの比率

なお、上記の裁判官には、判事・判事補を含みます。大雑把に言えば、判事は一人前と認められる裁判官(最高裁判所長官、最高裁判所判事、高等裁判所長官、簡易裁判所判事を含む。)で、通例では、判事は、判事補になって10年の勤務継続後に任命されます。

そこで、令和元年度調査結果に基づいて、判事・判事補ごとの女性裁判官の比率を整理します。

女性判事比率

女性判事比率は、女性裁判官比率と同様、右肩上がりです。平成15年には8.2%だったのに対して、平成30年には18,5%となり、2倍以上へと増加しています。

<女性判事比率>

女性判事補比率

女性判事補比率も対局的に見れば増加傾向です。

ただ、平成15年から平成19年ころにかけては24.5%前後で横ばい、平成26年から平成30年にかけては約34%から約36%で横ばいに推移しています。

<女性判事補比率>

 

女性にとってキャリア形成しやすくなっている?

ここでデータを眺めていて着目したのは、女性裁判官全体(判事・判事補全体)の中での判事補比率の推移です(女性裁判官の中で、女性判事補が占める割合の推移です。)。

<判事補比率(女性裁判官のなかの判事補比率)>

たとえば、平成15年度において、女性裁判官は394人いるとはいえ、そのうちの206人は判事補です。

上記の通り、判事は、判事補になって10年の勤務経験を積んだのち任命されるのが通例ですが、平成15年においては、394人中、判事として勤務している裁判官が188人しかいないわけです。

この判事補比率は、平成15年から平成25年ころまで、45%から50%の間で上下しますが、平成25年ころから顕著に下がります。

その意味は、10年間勤務を継続して判事となった女性判事補の割合が増えている、ということです。

全国転勤が勤務を長期に継続するネックと言われる裁判所内においても、家庭の事情への配慮が手厚くなってきたなどの理由で、女性のキャリア形成がしやすくなっている(あるいは判事補として着任した後、10年間継続就労がしやすい環境になっている)のかもしれません。