マンションの総会とは

今回のテーマは、マンションの総会(集会)についてです。

分譲マンションを購入した場合、そのマンションの管理が機能不全に陥っていない限りは、通常、年に1回定期総会が開かれます。

また、場合によっては臨時総会が開かれることもあります。

今回は、この総会(集会)について説明します。

マンションの総会とは?

マンションの総会というのは、マンションの区分所有者全員で構成される会議体です。当該マンションの管理に関し、最高意思決定機関に位置付けられます。

株式会社において株主総会が最高意思決定機関であるのと同様、区分所有建物たるマンションでは、管理組合総会が最高意思決定機関となります。

なお、分譲マンションに関する法律である区分所有法という法律は、総会のことを「集会」と表記しますが、内容は同じです。本記事では、以下、単に「総会」とだけ表記します。

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定期総会(通常総会)と臨時総会

マンション管理における総会には、定期総会(通常総会)と臨時総会とがあります。

定期総会について

区分所有法の下では、分譲マンションにおいては、年に1回、定期総会が開催されなければなりません。

たまに、分譲マンションなのに総会なんか開かれていないマンションがある、と見聞きすることがありますが、これは機能不全に陥ったマンションでしょう。

区分所有法は、年に1回定期総会を開くべきこと、年に1回、事務の報告がなされるべきことを法定しています。

参照:区分所有法34条 
1 集会は、管理者が招集する。
2 管理者は、少なくとも毎年一回集会を招集しなければならない。
参照:区分所有法43条
管理者は、集会において、毎年一回一定の時期に、その事務に関する報告をしなければならない。
<補足>管理者について
区分所有法34条1項や43条では、定期総会の招集や事務の報告主体を「管理者」と定めています。この「管理者」概念につき整理しようとすると、かなりの量の説明が必要となるため、ここでは省略しますが、多くの場合、「理事長」を指すと考えてよいです。

臨時総会について

また、マンションにおいては、必要に応じて臨時総会が開かれます。

臨時総会というのは、規約の変更や管理組合の法人化など、最高意思決定機関たる総会の議決が適宜の時期に必要な場合に開かれる総会です。

マンションの総会の決議事項

マンション総会では、どのような事項を決議するのでしょうか。

これはマンションごとにまちまちですが、国土交通省が公表するマンション管理にかかる標準管理規約(単棟型48条)において、次の事項については、総会の決議を経なければならないとされている点が参考になります。

これによれば、予算・決算の承認や、管理費額の決定、規約の制定、変更、廃止その他管理組合の業務に関する重要事項が総会の決議事項とされます。

標準管理規約48条が定める決議事項
一 収支決算及び事業報告
二 収支予算及び事業計画
三 管理費等及び使用料の額並びに賦課徴収方法
四 規約及び使用細則等の制定、変更又は廃止
五 長期修繕計画の作成又は変更
六 第28条第1項に定める特別の管理の実施並びにそれに充てるための資金の借入れ及び修繕積立金の取崩し
七 第28条第2項及び第3項に定める建替え等に係る計画又は設計等の経費のための修繕積立金の取崩し
八 修繕積立金の保管及び運用方法
九 第21条第2項に定める管理の実施
十 区分所有法第57条第2項及び前条第3項第三号の訴えの提起並びにこれらの訴えを提起すべき者の選任
十一 建物の一部が滅失した場合の滅失した共用部分の復旧
十二 区分所有法第62条第1項の場合の建替え及び円滑化法第108条
第1項の場合のマンション敷地売却
十三 役員の選任及び解任並びに役員活動費の額及び支払方法
十四 組合管理部分に関する管理委託契約の締結
十五 その他管理組合の業務に関する重要事項

総会決議の成立要件

総会決議にも多数決原理が妥当しますが、決議の成立要件は、決議する内容によって、普通決議が必要なのか、特別決議が必要なのかによって、異なります。

普通決議とは

まず、決議の区分所有者及び議決権の過半数で行う場合を普通決議といいます。団体の一般的な意思決定はこの普通決議により行います。

たとえば、次のような事項が普通決議の対象です。

普通決議とされるものの例
・役員の選解任
・予算の承認
・総会議長の選任
・管理者に対する訴訟追行権の付与

なお、普通決議の成立要件(区分所有者及び議決権の過半数で行う)は、区分所有法に定められたルールですが、管理規約等によって変更することが可能です。

参照:区分所有法第39条 
集会の議事は、この法律又は規約に別段の定めがない限り、区分所有者及び議決権の各過半数で決する。

特別決議とは

特別決議とは、出席者要件・議決権要件を厳格化することを要する決議です。

区分所有法上、区分所有者及び議決権の4分の3以上の多数による決議が必要なもの、区分所有者及び議決権の5分の4以上の多数による決議が必要なものの2種類があります。

この特別決議の要件は、規約によっても緩和できません。

<4分の3以上の特別決議を要するものの例>
参照:区分所有法31条(規約の設定・変更等) 
規約の設定、変更又は廃止は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議によってする。この場合において、規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない
参照:区分所有法47条(法人化)
第三条に規定する団体は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で法人となる旨並びにその名称及び事務所を定め、かつ、その主たる事務所の所在地において登記をすることによって法人となる。
<5分の4以上の特別決議を要するもの>
参照:区分所有法第62条 建替決議
集会においては、区分所有者及び議決権の各五分の四以上の多数で、建物を取り壊し、かつ、当該建物の敷地若しくはその一部の土地又は当該建物の敷地の全部若しくは一部を含む土地に新たに建物を建築する旨の決議(以下「建替え決議」という。)をすることができる。

招集の方法

区分所有法上、総会の招集手続は一定の要件を満たさなければなりません。

招集権者

まず、総会を招集できる招集権者についてです。招集権者については、区分所有法34条に定めがあります。

原則として管理者(多くの場合、理事長)が招集を行いますが(同1項)、一定の要件を満たす場合には、少数区分所有者に総会の招集を行う権限が認めらます(同3項、4項及び5項)与えられます。

参照:区分所有法34条
1 集会は、管理者が招集する。
2 省略
3 区分所有者の五分の一以上で議決権の五分の一以上を有するものは、管理者に対し、会議の目的たる事項を示して、集会の招集を請求することができる。ただし、この定数は、規約で減ずることができる。
4 前項の規定による請求がされた場合において、二週間以内にその請求の日から四週間以内の日を会日とする集会の招集の通知が発せられなかつたときは、その請求をした区分所有者は、集会を招集することができる。
5 管理者がないときは、区分所有者の五分の一以上で議決権の五分の一以上を有するものは、集会を招集することができる。ただし、この定数は、規約で減ずることができる。

召集の方法・決議事項の制限

召集の方法については、区分所有法35条に定めがあります。

これによると、招集権者は、原則として総会の日よりも1週間前に会議の目的たる事項を示した書面を区分所有者に発送しておく必要があります(同1項)。

また、その総会で決議できるのは、規約に別段の定めがない限り、招集に際してあらかじめ通知された事項に限られます(同37条1項)

ただし、区分所有者全員の同意があるときは、その限りでなく、上記の招集の手続も省略することが可能です(同36条、37条3項)。

参照:区分所有法35条
1 集会の招集の通知は、会日より少なくとも一週間前に、会議の目的たる事項を示して、各区分所有者に発しなければならない。ただし、この期間は、規約で伸縮することができる。
2~4項 省略(専有部分が共有の場合や招集通知の到達などに関する規定です)
5項 省略(一定の重要事項につき、議案の要領の通知も要するという規定です)
参照:区分所有法第36条 
集会は、区分所有者全員の同意があるときは、招集の手続を経ないで開くことができる。
参照:区分所有法37条
1 集会においては、第三十五条の規定によりあらかじめ通知した事項についてのみ、決議をすることができる。
2 前項の規定は、この法律に集会の決議につき特別の定数が定められている事項を除いて、規約で別段の定めをすることを妨げない。
3 前二項の規定は、前条の規定による集会には適用しない。

マンション総会への出席・欠席

マンション総会の実際の決議に際して、区分所有者全員が一堂に会して、というのは比較的珍しいケースだと思います。

欠席する方はいらっしゃいますし、議決権行使するにしても、委任状により代理人が出席したり、書面投票が行われたりなどの方法がとられることが多いです(区分所有法39条2項3項)。

区分所有法第39条 
1項 省略(上述の通り)
2 議決権は、書面で、又は代理人によって行使することができる。
3 区分所有者は、規約又は集会の決議により、前項の規定による書面による議決権の行使に代えて、電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)によって議決権を行使することができる。
<総会への出席について>
なお、総会に出席しない、欠席したからと言ってペナルティを課せられることはまずありませんが、ご自身のマンションのことですので、特別の事情がない限りは、出席できないまでも委任状や書面による投票は行うほうが、可能な限り多数の意思を団体委決定に反映させるという意味では、望ましいと思います。

委任状出席(代理人投票)

委任状出席というのは総会への出席につき、区分所有者が代理人を出席させて、議決権を行使させる場合です。

通常は、事前に代理権を証する書類(委任状)を管理者(理事長)に提出しておくことが要求されます。管理組合としては、出席者がすくないことを理由に総会が流会とならないよう、本人出席者がすくないことが見込まれる場合には、事前に委任状集めの努力をすることが必要になります。

なお、上記標準管理規約においては、代理人となり得る者の範囲を制限する規定が置かれています。委任状の提出があった場合、ご自身のマンションの管理規約に同様の制限が無いか注意してください。

参照:標準管理規約(単棟型)46条6項
組合員が代理人により議決権を行使しようとする場合において、その代理人は、以下の各号に掲げる者でなければならない。
①その組合員の配偶者(婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)又は一親等の親族
② その組合員の住戸に同居する親族
③ 他の組合員

書面投票

書面投票は、現に出席することは無いものの、あらかじめ議案に対する賛否を記載した書面を提出することで、決議に参加する方法です。

1号議題、2号議題、3号議題などとある場合に、それぞれの議案ごとに、賛否の別を記載した書面を提出することになります。

補足:書面決議とは

上記で説明した書面投票と似て非なるものに、書面決議というものがあります。

これは、総会決議事項とされた議案につき、『区分所有者全員』の書面による合意を要件に、書面による決議があったものとみなし、総会決議と同一の効力を持たせるものです。

法律上は、電磁的方法による決議も同一の仕組みで実施することが可能とされています。

ただ、実際上、区分所有者全員の書面などを集めることは困難なため、利用例は少ないと報告されています。

参照:区分所有法45条
1 この法律又は規約により集会において決議をすべき場合において、区分所有者全員の承諾があるときは、書面又は電磁的方法による決議をすることができる。ただし、電磁的方法による決議に係る区分所有者の承諾については、法務省令で定めるところによらなければならない。
2 この法律又は規約により集会において決議すべきものとされた事項については、区分所有者全員の書面又は電磁的方法による合意があつたときは、書面又は電磁的方法による決議があつたものとみなす。
3 この法律又は規約により集会において決議すべきものとされた事項についての書面又は電磁的方法による決議は、集会の決議と同一の効力を有する。
4 第三十三条の規定は、書面又は電磁的方法による決議に係る書面並びに第一項及び第二項の電磁的方法が行われる場合に当該電磁的方法により作成される電磁的記録について準用する。

総会議事録の作成・保管

上記のような手続きを経て、無事総会が終わったとしても、理事長ないし理事の仕事はまだ終わりではありません。

マンションの総会が開かれた場合、区分所有法上、議長(多くの場合理事長)は、書面又は電磁的記録で、その議事録を作成することが必要です。

議事録の作成に際しては、集会の議事の経過の要領及びその結果を記載・記録されているか、、議長、総会に出席した区分所有者の二人がこれに署名押印(書面で作成した場合)し、または署名押印に代わる措置(電磁的記録で作成した場合)が取られているか、よくよくチェックしてください(同42条)。

また、作成された議事録は、管理者などが保管し、正当な理由を有する利害関係人がその開示を求めた場合には、これを開示しなければなりません。議事録の保管場所についても、マンション内の物内の見やすい場所に掲示することを要します(同33条)

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マンション管理組合が保有する会計帳簿等の謄写請求等について解説した記事です。
参照:区分所有法第42条 
1 集会の議事については、議長は、書面又は電磁的記録により、議事録を作成しなければならない。
2 議事録には、議事の経過の要領及びその結果を記載し、又は記録しなければならない。
3 前項の場合において、議事録が書面で作成されているときは、議長及び集会に出席した区分所有者の二人がこれに署名押印しなければならない。
4 第二項の場合において、議事録が電磁的記録で作成されているときは、当該電磁的記録に記録された情報については、議長及び集会に出席した区分所有者の二人が行う法務省令で定める署名押印に代わる措置を執らなければならない。
5 第三十三条の規定は、議事録について準用する。
参照:区分所有法33条
1 規約は、管理者が保管しなければならない。ただし、管理者がないときは、建物を使用している区分所有者又はその代理人で規約又は集会の決議で定めるものが保管しなければならない。
2 前項の規定により規約を保管する者は、利害関係人の請求があつたときは、正当な理由がある場合を除いて、規約の閲覧(規約が電磁的記録で作成されているときは、当該電磁的記録に記録された情報の内容を法務省令で定める方法により表示したものの当該規約の保管場所における閲覧)を拒んではならない。
3 規約の保管場所は、建物内の見やすい場所に掲示しなければならない。

総会決議の無効

以上、マンションの総会決議の手続や要件について見てきましたが、最後に決議の無効についてです。

総会決議の内容が、たとえは強行法規に違反するような場合や、公序良俗に反するような場合、その総会決議の有効性は維持できませんので、当該決議は無効なものと扱われます。

また、実際上、決議をしたが、決議要件を満たしていなかったという場合も同様です。

加えて、招集手続などに違反がある場合にも、当該決議は無効と扱われる可能性があります(重大な手続違反がある場合に限るべきとの見解も有力です)。

上記のような理由で決議が無効となる場合、当該決議で定めた事項については、法律上の効力が否定されます。

せっかく決議をしたのに、上記のような理由で決議が無効となってしまっては、管理組合としては、その努力が水の泡に消えるということにもなりかねません。

特に、理事長になって初めて総会を開催するといった場合には、上記で説明してきたような事柄を参考にしていただき、場合によってはマンション管理会社などの手も借りて、慎重を期すことが重要です。