今回は、分譲マンションを購入する人・所有する人は知っておきたい「区分所有」という概念について説明します。
単純な「所有者」概念と比較しつつ、理解していきましょう。
所有者とは
所有者というのは、文字通り、ある物を所有する者をさします。
たとえば、今、私の目の前には、私が購入したパソコンがありますが、このパソコンの所有者は私です。その所有権は私にある、ということになります。
一つの物には一つの所有権(一物一権主義)
ここで、法律上の重要な原則的ルールを紹介します。それは、一つの「物」には一つの所有権(物権)しか存在しえないということです。
私の目の前にあるパソコンについて成立しうる所有権は1個だけ、ということになります。
共有について
議論が難しくなるので、詳論は避けますが、ここで、「共有」という概念についても確認しておきます。
上記の通り、一個の物には、一個の所有権しか成立しませんが、これを複数人が共有するという状態は法律上も認められます。いわば1個の所有権を分け合うイメージです。
たとえば、パソコン1台につき成立する1個の所有権を私と配偶者とが「共有」するということは全然あり得るということになります。
不動産を共有している場合の所有割合の定め方や確認、売却の方法などにつき整理した記事です。
区分所有とは
区分所有とは、1個の物と評価される建物を、構造上および利用状態に基づき、数個の部分に区分して所有する所有形態のことを指します。
一個の建物につき、これをある区画で区分して、そこに所有権の存在を認めるものともいえます。
上記の一物一権主義との関係でいえば、そもそも、ある一個のマンションに成立する所有権は、1個しかありえないはずです。
しかし、区分所有法という法律は、この一物一権主義を訂正して、分譲マンション等につき、区分された個々人の個別の住居部分(これを専有部分といいます)に独立した所有権が成立することを認めています。
マンションで、「区分所有」というときは、この専有部分に成立する独立した所有権を指している、と理解できます。
区分所有者と区分所有権
区分所有者というのは、マンションなど一棟の建物のうち、区分された専有部分に成立する所有権を有する者のことを指します。
マンションでいえば、たとえば、201号室などと区分された部屋の一室(専有部分)を所有する者です。また、その権利のことを区分所有権と言います。
なお、先ほど、「共有」という概念も説明しましたが、区分所有にも共有概念は成立しえます。
たとえば、201号室の区分所有権を夫婦で共有する(夫婦共有の名義にする)ことも当然可能なわけです。
また、区分所有権が成立する場合、これは独立した権利と評価されますので、住宅ローンを組む際に、ここに抵当権を付したり、独立して売却の対象としたりすることも可能となります。
共用部分
ここで、共用部分について簡単に述べておきます。
これまで述べてきた「共有」ではなく、「共用」部分という用語が類似しており、紛らわしいですが、これは、区分所有が成立する建物において、各所有の対象外となる部分のことを指します。
たとえば、分譲マンションの廊下やエントランスなどがこの共用部分に該当します。
共用部分は、区分所有者の「共有」に属します。
区分所有建物の例
最後に、区分所有の対象となる建物の例をいくつか見ていきましょう。
分譲マンション
まず、典型例となるのは分譲マンションです。各専有部分が区分所有の対象となります。
また、賃貸マンションの整理は難しいのですが、区分所有建物としては利用されていないため、区分所有建物というときには、一般的には除外して考えます。
区分所有オフィス
また、マンションに限らず、オフィスも区分所有の対象となることがあります。
1個のビルが、複数の区画に区分されているとき、当該区画につき、区分所有が成立しえます。
2世帯住宅にかかる一戸建て
また、マンションのようなビルの形をとらず、木造一戸建てのような外観をとる場合にも、たとえば、1階部分と2階部分とが、構造的に独立し、かつその利用も独立させることができるのであれば、区分所有は成立しえます。
たとえば、2階部分に直接つながる外部階段があり、2階部分が1階部分と区画されており、独立した生活住居としての利用が可能な2世帯住宅などは、これに該当しえます。