今回のテーマは、週6勤務・週休1日制についてです。
まず、雇用主たる会社が従業員・労働者を週6日働かせて、1日休ませるという仕組みを採用することが法律上可能か否かとの点について解説します。
次に、この場合に、会社が給料(残業代)の計算をきちんとしているか(ちゃんと計算されているか、多くの企業でかなり怪しい)を中心に解説していきます。
週6勤務・週休1日制とは
きつい・しんどいと検索されて当ブログに来ていただく方多数ですが、「週6勤務」だけでは違法とはいえません。
週六勤務の形態
週六勤務は、たとえば、月曜日から土曜日までが勤務、日曜日のみが休みといった形の勤務形態がこれに該当します。
上場企業や大手の企業などにおいては、週5勤務、週休2日か一般化しつつあります。
しかし、他方で、建設業界など、特定の業界を中心に、週6勤務、週1休日制を採用する企業・会社は、現在でも少なくありません。
また、シフト制を採用する会社でもしばしば週六勤務、週給1日制が採用されます。
「週6勤務 つらい」「週休1日 きつい」で検索する人多数
インターネットなんかをみると、週6勤務・週1日制がきつい、しんどいといった声は多々聞かれます。
グーグルで、「週6勤務」や「週給1日」と入力して表示されるサジェスト候補(検索候補)には、「週6勤務 つらい」「週休1日 きつい」などの文字が表示されます。
当サイトにもこれらのワードで検索されてくる方がいらっしゃいます。
週六勤務での激務に悩まれている方が相当数存在することが窺われます。
法律上は違法ではない
ただし、法律上、会社や企業がこの週6勤務・週1日制を採用することは可能です。違法ではありません。
労働時間の上限等について定めている法律は、労働基準法という法律です。
この労基法には、1週間の労働時間の上限や休日につき、同32条、35条のように定めているにすぎず、週6働かせてはならない、というルールは存在しません。
要は、1週間のうち、1日は休日を取らせなさい、1週間の所定労働時間は40時間内に収めなさい、というルールしかないのです。
したがって、たとえば、会社は、月曜日から土曜日まで、1日「6時間40分」の労働を求める、といった仕組みを取ること自体は違法とは言えません。
第1項 使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
第2項 使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。
第1項
使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない。
第2項
前項の規定は、四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については適用しない。
始業~就業が8~9時間であることも多いが…
もっとも、その場合でも、始業から就業までの通算時間が8時間から9時間という会社も往々にしてあります。
その謎を解くポイントは、「休憩」時間です
週6日勤務だけど、始業~終業の定め8時間以上ある
【1日「6時間40分」に労働時間を納めれば週六勤務も合法である】と聞いて、違和感を感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
たとえば「あれ、うちの会社、朝8時30分から午後5時30分までの勤務で、昼休みの1時間を除けば、8時間労働しているけど、、、」(始業から通算まで9時間のケース)という方。
実際、週六勤務制を引きつつ、通算8時間ないし9時間以上の就業時間を定める会社は少なくありません。
週6勤務だけど、始業・終業の時間は週5勤務の会社と変わらない、ということが往々にしてあるわけです。
休憩時間がちゃんと与えられているか
週六勤務なのに、なぜ、始業時間・終業時間が週5勤務の会社と同じなのでしょうか?
謎を解く答えは休憩時間にあります。会社は所定の休憩時間を長く設定することで違法性を回避しています。
就業規則の確認を
お心当たりのある方は、ここでぜひ一度、会社の就業規則を確かめてみてください。
就業規則で、昼休みの1時間のほかに、会社が労働者に休憩時間を1時間20分与えることが規定されていないでしょうか。
上記の通り、週6勤務で、始業朝8時30分、就業午後5時30分までの勤務とされているなど、始業から就業までの通算時間が9時間である場合、会社が、昼休みの1時間以外の休憩のほか、休憩を与えずに労働をさせるのは、1週間に40時間越えて働かせることになります。
これでは、上記の労基法32条に違反してしまいます(週40時間ルール違反)。
そこで、週給6日制をとる会社の多くは、労基署から怒られないように、就業規則などで、昼休み1時間休憩のほか、別途休憩時間を取らせることを謳っているはずです。
会社は、そのような仕組みをとって、「1日の労働時間は少ないですよ、出勤時間、出社時間は他社とだいたい同じですけど、うちは合間に十分休憩時間与えていますからね~」という建前で、週6勤務、週休1日制の合法性を担保しているのです。
実際に休憩がとれているか
ただし、休憩時間付与の実体を欠くことは少なくありません。
就業規則で、就労の合間に長めの休憩(たとえば2時間20分など)を労働者に取らせることを謳っておきながら、実際にはその通りの休憩時間を与えていないことが、ままあります。
週6勤務の建前上の仕組みが分かったところで、皆さんの実際の勤務状態はどうでしょうか。
上記の例で、昼休みの1時間以外の休憩時間として設定された1時間20分に該当する部分の休憩時間をきちんと会社でとれているでしょうか。
ブラックな会社では、この昼休み以外の休憩時間は、就業規則には謳われているものの、実際にはなきものと扱われていることが往々にしてあります。
中小・零細企業などでは休憩時間とうたっておきながら、電話がかかってきたら取らなければいけなかったり、外部からの訪問があればそれに対応しなければならなかったりと、実際には休憩時間として機能していないことがざらにあります。
合間に休憩を取らせることを謳っておきながら、その実体を欠く、ということが少なくないのです。
給料(残業代)がちゃんと出ていない可能性
週6勤務で、所定就業時間が1日8時間とか9時間などの会社で、就業規則に定められた昼休み以外の休憩時間が実体を伴っていない、という場合、給料ちゃんと計算されているでしょうか。
この場合、労働基準法上、時間外労働の認定が必須であり、残業代が支払われていないのであれば、給料はちゃんと出ていないということになります。
どういうことが、もう少し見ていきましょう。
週40時間を超える労働については時間外手当が必要
まず、労働基準法の基本的なルールとして、週40時間を超える労働については時間外手当が必要とされています。
会社が、1日8時間労働というルールを守っていても、1週間の単位で40時間を超える労働を従業員にさせていたという場合、40時間を超える部分については、時間外手当を支払わなければならないのです(法37条1項本文)。
使用者は、・・・、第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)・・・に関する規定にかかわらず、・・・労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。
使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
週6勤務・週休1日制と残業代
上記の残業代に関するルールを前提に、週6勤務・週休1日制についてみていきましょう。
まず、1日の労働時間がそれぞれ就業規則所定された6時間40分などの時間の範囲内に収まる場合、残業代の問題は生じません。
1日単位の労働時間が8時間の範囲内ですし、1週間単位の労働時間も週40時間を超えないからです。
しかし、週6勤務・週休1日制を採用する会社において、労働者が昼休み以外の休憩時間にも実際は労働を強いられている、という場合には残業代の問題が生じます。
就業規則上で休憩時間と定められていても、当該時間に働かされている場合、その休憩時間分も労働時間に該当します。
そのため、その休憩時間を含めて週40時間を超える労働が強いられていれば、時間外賃金が発生します。
具体例~昼休み以外の休憩が無い場合~
先ほどの例で、昼休み以外の休憩時間1時間20分につき、休憩時間としての実体がなく、実は労働時間であるという場合を見てみましょう。
この場合、当該会社で働く労働者の1日当たりの労働時間は、就業規則所定の6時間40分+就業規則上休憩時間とされた1時間20分の合算である8時間となります。
そうすると、当該労働者は1週間で「8時間×6日=48時間」働いていることとなりますので、会社は、40時間を超えた8時間分については、基本給とは別に、割増賃金(残業代)を支払われなければなりません。
割増賃金の額は、最低でも基礎賃金の1.25倍となりますから(労基法37条1項本文)たとえば、1時間当たり1000円で働く労働者であれば、1000円×8時間×1.25倍の給料が基本給とは別に支給されなければならないという計算になります。
この時間外手当が支払われていないことが多い
週6勤務・週休1日はきつい、しんどいとお悩みの方、一度、残業代がしっかり支払われているか検討してみてはどうでしょうか。
週6勤務制をとる会社で、労働者に休憩時間も仕事を強いているという会社の場合、労務管理はずさんなことが多いです。
労働者側にとっても、終業時刻を超えて仕事をしているわけではないので、休憩時間分の労働を含めた残業手当の請求は盲点となりがちです。
特に零細・中小の企業に多いのですが、会社は、所定の就業時間(始業から就業までの時間)しか労働者を働かせていないから、残業代を支払う必要ない、と考える経営者も少なくありません。
ちゃんと残業代請求をすれば、権利面では意外と報われるかもしれません。