無断駐車への制裁!出られなくする、レッカー移動する等はOK?

自分が借りている月極め駐車場、無断駐車されたら腹が立ちますよね。

そこで、本記事では、無断駐車への制裁やレッカー移動の可否について説明します。

レッカー移動については、関連する有名な裁判例を紹介しますね。

無断駐車の車両を出られなくしたりしてよいか。

最初のテーマは、無断駐車車両に対して、出入口を塞いだりタイヤをロックしたりして良いか、という点です。

タイヤのロックなど制裁を加えたくなるのは自然

本題に入る前に、私の体験談ですが、雨の日に自分が契約している駐車場に駐車しようとしてから、他の車両が出てきて頭にきたことがありました。

その時は、帰りを急いでいて、早く駐車して帰宅したかったのですが、結局しばらく待つことに。

1時間ほど待っていたら、ようやく車の持ち主が友人らしい人物と一緒に現れました。近くの飲食店の専用駐車場と間違えていたとのこと。

きちんと謝られたし、うーん、間違っていたならしょうがない、という面もあるのだけれど、相当イライラしながら待っていた私の一時間は返してほしい。

大人な対応して、イライラをぶつけたりはしなかったけど、やっぱり気分は悪い。

こんな車を見つけた時、制裁として、自動車の出入口をふさいで出られないようにしたり、タイヤをロックしたりして、制裁を与えたい、というのは、分からないでもないですよね。

出入口を塞いで出られないようにしても救済にならない。

至極自然な発想からすれば、相手が違法な行為をしている訳だから、これに対して、出入口をふさいだり、タイヤをロックしたりと言った実力行使は、ある程度許容されるのでは?とも思えます。

反省を促す意味でも、ある程度、制裁のような措置を受けるのはやむなしと・・・。

しかし、法律的に見てみると、無断駐車・違法駐車車両に対して、出入口を塞いで出られないようにする、という行為は、それによって自分が駐車出来るようになる、という訳ではない。

要は、自分の権利とか利益の回復になっていないわけで、そもそも自力救済ともいえないし、およそ正当防衛でもない。

自力救済は、原則として禁止されている、という話以前の問題で、タイヤをロックする等は許容されない。

したがって、法律的にはアウトです。場合によっては、反対に訴えられかねません。

無断駐車でイライラさせられたあげくに訴えられるのでは、踏んだり蹴ったりです。

レッカー移動はどうか?

では、制裁という点は一旦措くにしても、レッカー移動はどうでしょうか。

要は、無断駐車車両を駐車場からどかして、自車が留められればいいわけですから、レッカー移動さえできれば、基本的にはOKのはず。

自力救済の禁止の原則に反する恐れあり

しかし、原則として、レッカー移動も基本的にはNGと考えられます。

先ほど少しでてきましたが、民法においては、自力救済は原則として禁止されています。

自力救済というのは、自分の実力を行使して違法状態を是正することいいます。これが原則として禁止されている訳です。

無断駐車車両に対するレッカー移動も、まさに自力救済の一つですから、基本的にはNGということになります。

色々なホームページ見てみましたけど、NGという意見ばかりです。

但し、例外としてレッカー移動も許容されうる

ここまで読まれたた方の中には、なんだよ、結局NGかよ、とお思いになる方もいるかもしれません。

しかし、原則というからには、例外もあります。

そして、無断駐車・違法駐車については、自力救済に関わる着目すべき有名な判例が有ります。昭和63年2月4日横浜地方裁判所判決です。

自力救済を認めた裁判例

この判決の事案は、ある自動車の所有者が、車を移動するように再三にわたって督促されたにもかかわらず、人の不動産の前に車を3ヶ月間置きっぱなしにしたため、住人が車を処分したというケースです。

このケースにおいて、裁判所は、車の所有者からの損害賠償請求を否定しました。すごいでしょう?自力救済が許容されている訳です。

無断駐車・違法駐車にかかる車の処分という自力救済が違法でないとされた貴重な事案と言えます。

関連記事:自力救済の禁止について

自力救済の禁止という民法の大原則について解説した記事です。最高裁がこの原則に関し、例外となるべき場合の規範を示し、下級審が無断駐車について事例判断を示した点についても解説しています。ぜひご一読ください。

レッカー移動が可能な場合がある!

もちろん、上記の裁判例は個別事案の判断になりますので、レッカー移動については、事案に応じて慎重に判断しなければなりません。

しかし上記事案をベースとすれば、余りに長期に渡る無断駐車につき、レッカー移動、特にごくわずかの移動を図ったとしても、違法でないとされる余地は十分ありえると思われます。

たとえば、警察に通報、そして、所有者や管理者に連絡が付くのであれば連絡、連絡をつけようがなければ、コーンや張り紙で警告、そこまでやって数か月たってもらちが明かないのであれば、レッカー移動が許容される余地ありです。

無断駐車を撤去させるための王道は裁判ですが、コストと時間がかかるのは間違いない。弁護士等に相談の上、合法的にレッカーなどの移動ができないか、上記判例をベースに検討する価値はありますよ。